再発・進行髄芽腫に対する大量化学療法と局所照射で成績改善
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「髄芽腫」の記事における「再発・進行髄芽腫に対する大量化学療法と局所照射で成績改善」の解説
2007年5月31日に出版された有名な医学雑誌「Cancer」に掲載されたフランスのJacques Grillらによる報告。 「通常の化学療法の後に局所再発もしくは進行した髄芽腫に対する自家幹細胞救援を伴う大量化学療法とそれに続く後頭蓋窩への照射」 High-dose chemotherapy with autologous stem cell rescue followed by posterior fossa irradiation for local medulloblastoma recurrence or progression after conventional chemotherapy Cancer Volume 110, Issue 1 , Pages 156 - 163 Published Online: 31 May 2007 http://www3.interscience.wiley.com/cgi-bin/abstract/114275153/ABSTRACT 全摘出後、局所再発をした27名、および全摘出できず局所残存腫瘍が進行した12名の計39名に、600mg/m2のブスルファンと、900mg/m2のチオテパが投与され、引き続いて自家幹細胞移植(ASCT)が行われた。ASCTの70日後に後頭蓋窩に50Gyから55Gyの照射が行われた。 急性の副作用は、患者の33%に生じた肝臓の静脈閉塞症?(hepatic veno-occlusive disease)と、骨髄無形成症?(bone marrow aplasia)であった。 感染症によって2人(5%)が死亡した。 この救済療法を受けた39人の子供たちの5年全生存率は、68.8%(95%の信頼区間[95%CI]、53-81.2%)であった。局所的な再発のために治療された患者のグループでは、5年全生存率は77.2%(95%CI、58.3-89.1%)だった。 病巣進行の時点で治療された局所残存病巣のある患者では、50%(95%のCI、25.4-74.6%;P=.09)だった。 結論として、この治療戦略は、局所的な再発ないし進行のある髄芽腫において、高い全生存率をもたらし、かつその治療毒性は対処しやすいものであるとされている。 これまで、再発髄芽腫を治癒することは追加照射などを加えてもほぼ不可能であるとされていたが、最近、大量化学療法によって、有望な結果がいくつか報告されてきた。しかし、そのいずれも経過観察期間が2年や3年という短いもので、しかも、それほど高い成績ではなかった。本件では、68.8%、全摘後の局所再発例については77.2%という高い5年全生存率が得られている点が注目される。ただし、局所に放射線照射を併用している点が留意されなければならない。要旨からだけでは、この救済療法の前にどのような治療を受けてきたのかが不明であるが、局所照射が可能であることが前提となる。仮に以前の治療で局所照射がなされている場合には、追加照射が可能であるとしても、IMRTのような精度の高い照射を考えないといけないかもしれない。 なお、上記報告では33%のhepatic veno-occlusive diseaseが発生しているが、これはブスルファンによる副作用である。日本小児脳腫瘍コンソーシアムでは、ブスルファンではveno-occlusive diseaseの頻度が高くなることと、経口剤であるがゆえ、血中濃度に個体差が出るために、同様のアルキル化剤であるメルファランを使用している(原純一「大量化学療法」脳腫瘍の最新医療 先端医療技術研究所)。
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