光度と色の変動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/13 15:04 UTC 版)
主系列星の核に核融合を起こさないヘリウムが蓄積していくのに従って単位質量あたりの水素の存在度が低下し、その結果として単位質量あたりの核融合の効率が徐々に低下する。恒星の外層を支えているのは核融合によって供給されるエネルギーの外向きの流出であるため、核での核融合効率の低下にともなって核は圧縮され、結果として温度と密度が上昇する。これによって核融合の効率が上昇し、核は小さく高密度で高温な状態で平衡となり、外向きのエネルギーが増えることによって恒星の外層を膨張させる。そのため恒星の光度と半径は時間の経過に従って着実に増加する。例えば、初期の太陽は現在の 70% の光度に過ぎなかった。恒星が年老いていくにつれて光度が上昇し、HR図上での位置が変化する。観測される恒星の年代は様々であるため、HR図上での主系列の帯は幅広いものとなる。HR図上での主系列が単なる細い線にならないのはこのためである。 HR図上での主系列の帯を広くする別の要因としては、恒星までの距離の不定性や、観測された恒星の物理量に影響を及ぼす分解されていない連星がある。しかし恒星の色と光度に影響を及ぼすパラメータは質量のみではないため、観測が完全であったとしても主系列の帯は広がったものとなる。いくつか例を挙げると、初期の存在度に起因する化学組成の違い、恒星の進化状態、近接する伴星との相互作用、恒星の高速な自転、恒星磁場は全てHR図上での位置にわずかに影響を与える。例えば金属量が少ない金属欠乏星はHR図上では主系列よりも下に位置し、準矮星として知られている。これらの恒星は核での水素核融合を行っており、化学組成の違いによって引き起こされる主系列のばらつきの下端に位置している。 HR図のほぼ垂直な領域は不安定帯として知られており、ケフェイド変光星と呼ばれる脈動する変光星で占められている。これらの恒星は一定の間隔で等級が変化し、脈動しているように観測される。この不安定帯は A 型と F 型の領域の主系列の上部と交差し、交差部分に相当する質量は 1〜2太陽質量である。この交差領域にある変光星はたて座δ型変光星と呼ばれる。この領域内にある主系列星の等級の変化は小さいため、検出するのが難しい。なおケフェウス座β型変光星などの不安定な主系列星からなるその他の分類は、この不安定帯とは無関係である。
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