併合罪の遮断
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/05/15 14:29 UTC 版)
さらに、禁錮以上の刑に処す確定判決以降に犯した罪については、併合罪としての評価や処理はなされず、原則として刑の執行が併科される事となる。この場合、併合罪ではないので51条による併科制限もされない。前記の事例では、A罪の刑とB罪の刑の間では51条に基づき刑の執行の併科制限が掛かるが、C罪の刑はそれとは独立して執行される(量刑上の考慮が否定される訳ではない)。なお、罰金以下の刑(拘留又は科料を含む)に処す確定判決によっては併合罪は遮断されない(同時的併合罪として処理される)。 その趣旨は、自由刑の宣告により犯人には強烈な反省・自己矯正の機会が与えられるところ、確定裁判以後に犯した罪は、こうした反省・自己矯正を経るべきであったにもかかわらず犯した罪であるという意味において、より犯情の悪い罪として評価すべきであり、確定裁判以前に犯した罪とは別個に処断すべきものと考えられることから、確定裁判を区切りとして一括処断すべき罪の範囲を画することにある。 なお、昭和45年の刑法改正により、「確定裁判」が「禁錮以上ノ刑ニ処スル確定裁判」と改められた。これは、複数の犯行の間に罰金以下の確定裁判があったか否かを確認しなければならないことによる実務上の煩雑さを避けるための改正である。 事例として、オートバイ窃盗罪(Xとする)の確定判決より前に5件の強姦致傷罪(Aとする)、その後に4件の強姦致傷罪(Bとする)を犯した被告につき、Aの罪を併合罪とし懲役24年の刑、Bの罪をAの罪とは別個の併合罪として懲役26年の刑をそれぞれ宣告。両刑は執行上併科されるため通算で懲役50年の刑を科す事となった判決がある(平成23年12月5日静岡地裁判決)。 このような科刑上の取扱については批判もあり、併合罪の遮断の評価について通説が分かれている。 特に単純一罪と評価されるような犯罪、つまり集合犯(常習犯・営業犯)や包括一罪について、時期的中間にその他の罪の確定判決があった場合の取扱が問題となる。
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