作品の意義と評価
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 14:08 UTC 版)
『担へ銃』が完成した時点で心身ともに疲労困憊していたチャップリンは自己を失っており、完成したばかりの『担へ銃』の出来栄えが気に入らず、「なんともがっかりした作品で、ごみ箱にぶちこんでしまおうかと思っていた」と本気で考えるようになったり、試写で大笑いしたフェアバンクスの姿を見ても疑いの眼差しを向けたりするほどであった。笑いの限りを尽くして鑑賞したフェアバンクスはただ一言、「この男をどう思う?あれ(『担へ銃』)をごみ箱にぶちこみたいんだってさ!」と述べて『担へ銃』を評価した。 大戦終結1か月前に封切られた『担へ銃』は、それまでに公開されたチャップリン映画の中で商業的に最も成功し、批評家やマスコミからも高い評価を得た。また、新しい喜劇映画のジャンルを打ち立てた、当時としては画期的な作品でもあった。それまで映画では、戦争は真面目なテーマとしてのみ扱われてきたが、喜劇映画の題材として戦争が取り上げられたのは、本作が最初であると考えられている。もっとも、パーヴァイアンスはハリウッドのアイリス・シアターで『担へ銃』を鑑賞した際、観客の入りがいまひとつであったことをチャップリンに手紙で伝えている。またパーヴァイアンスは手紙の中で、チャーリーにだけ小包が届かないシーンでは自分も含めて観客が感極まっていたことも伝え、自分の意見としては塹壕でドイツ兵に手を差し伸べるシーンは海外では受け入れられないのではないかとも述べている。 チャップリンは戦争を単純に喜劇化したわけではなかった。戦場のチャーリーはとにかく孤独であり、ただ一人郵便物が来ず、ほかの兵士の手紙を盗み読みするシーケンスに、多くの大戦経験者が涙したと伝えられる。チャップリン研究家の大野裕之は「当時の戦争映画でここまであからさまに兵士の孤独や悲しみを描いた例はなく、戦意を高揚させるものではなかった」と論じている。『担へ銃』を鑑賞した大戦経験者の心の中での評価については、チャップリンの伝記を著した映画史家のデイヴィッド・ロビンソン(英語版)も「そして象徴的なことに、実際の戦闘を体験した人々こそが『担へ銃』の真価を本当により理解した観客であった。」と論じている。
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