体表の粘液的物質について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:53 UTC 版)
「ヤニサシガメ」の記事における「体表の粘液的物質について」の解説
本種は幼虫、成虫ともに触ってみるとねばねばしており、特に歩脚で著しい。これは粘液に体表が覆われているからで、それも松ヤニに似ていることが古くから言われてきた。和名の由来もこれであると思われる。ただしその粘液の由来については昆虫自身が分泌するものと考えられてきた。 たとえば伊藤他編著(1997)には『体全体にマツヤニ状の粘着物を分泌し』とある。またこの種の観察からマツヤニの分泌場所に口吻を差し入れていることが見られており、その成分が分泌物に反映しているという考えや、歩脚の瘤状部から分泌されるのではないかとの推測もなされた。ところがこの粘液が分泌物ではなくマツヤニそのものであることが判明した。飼育下では容器内の松の小枝を入れ替えると、そのたびに本種がやってきて、1時間ばかりも掛けて松ヤニを自身の体に塗りつけ、これは大部分の個体に見られたという。その手順も決まっており、まず松ヤニ分泌部に来ると第1脚の先端部で松ヤニをこすり取り、それを用いて第2脚の腿節にこすりつけ、次はここから第3脚の腿節へ、および第1脚の腿節へ、最後は第3脚腿節から腹部側面と背面にこすりつける。 この間、昆虫は松ヤニの分泌部に口吻をさし込んだり触角による打診を行ったりもする。飼育下ではこのような新鮮な松の小枝の供給を止めると昆虫の体表の光沢が弱まり、それだけでなく、動きが弱まり餌もとらなくなり、次第に衰弱して死に至るといい、本種にとって必須のものであることが分かる。 なお、本種がなぜ松ヤニを体にまとうのか、その意味や効用については明らかではない。ネット上ではその粘着力で獲物を捉まえるのではないか、といった話もあるようだが、明らかにされてはいないようである。
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