会社の種類ごとに異なる区
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/02 15:15 UTC 版)
「登記事項 (商業登記)」の記事における「会社の種類ごとに異なる区」の解説
また、何故会社の種類ごとに異なる区があるのかは、「誰が何のために公示を要請しているのか」を考える必要がある。まず、会社の種類によって異なる区のほとんどが、社員および資本に関する事項である。これらの公示を必要とする者とその理由は以下の様になる。 会社の債権者………………自己の債権回収の可能性を把握するため。 会社の出資者(所有者)…出資(投下資本)及びその利益の回収の可能性を把握するため。 会社の債権者の立場からは、債務者となる会社が合名会社や合資会社の場合、無限責任社員の個性が、債権回収の蓋然性に直結する。そのため、これらの会社は、その登記簿で「社員」の公示が義務付けられる。しかし、合同会社や株式会社の場合、無限責任社員がいないため、債権者の関心は、専ら会社財産の多寡に集まることとなる。それゆえ、これらの会社は「資本金の額」を公示する必要性が出てくる。また、株式会社には、債権者保護の観点から、企業担保権も株式会社の登記簿で一体的に表示することになっており、他の会社とは異なって、企業担保権区が設けられている。 また、会社の所有者ないし出資者の立場に立った場合、投下した資本が誰によって運用されるかは非常に重要な情報であり、任務懈怠時の責任追及の為にも、経営陣の公示が必要となる。持分会社の場合には、所有者が経営者であるから社員区を見れば経営陣がわかることになるが、場合によっては業務執行社員や代表社員が定められている場合があり、その特定のためにも「社員区」が必要になる。株式会社の場合は、所有と経営が分離している為、「社員」の公示は必要ではないが、経営陣の公示の要請は株式会社でもあるので、「役員区」でそれを公示する事になる。 また、株式会社の役員がその職務を行うにつき損害賠償を請求される場合は、額が天文学的に莫大な数字になることも多々あるため、役員の地位に着く者(特に社外取締役)を確保するために責任を限定的にする手段が必要となるが、その手段の行使は、債権者や株主を害する結果につながりかねないため、そのような、役員の責任を軽減するような手段を導入した場合は公示が必要となる。その様な理由で、株式会社には特に「役員責任区」が設けられている。 更に、株式会社の場合、出資比率の変動が、出資者の利害に絡む場合が多いので、株式や新株予約権に関する事項の公示が要請される(詳しい出資比率などは株主名簿の閲覧によって知ることになる)。
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