付属肢の機能と生態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/05 10:51 UTC 版)
現生鋏角類であるクモの腹側。前体6対の付属肢のうち後4対(I-IV)が歩脚となり、後体の付属肢は目立たない書肺(17と18)と糸疣(21と22)となっている。 ハベリアの頭部(前体)。第2-5付属肢対における顎基と外肢は大顎類の大顎と触角のように、それぞれ摂食と感覚に用いられ、直後の第7対で摂食を補助していたと考えられる。 ハベリアと収斂進化した大顎類であるムカデ。頭部は触角(ant)・大顎(1)・小顎(2と3)をもち、胴部由来の顎肢(4)も口器に特化していた。 ハベリアは基盤的な鋏角類とされるが、前体の付属肢はほとんど主に歩行に用いられ、後体の付属肢は多くが退化的な現生鋏角類とは異なって、ハベリアの頭部(前体)付属肢は主に口器として用いられ、胴部(後体)の付属肢で歩行していたと考えられる。このような付属肢の機能分化は現生の鋏角類らしからぬ、むしろ同様に節足動物だが別系統の大顎類(多足類・甲殻類・六脚類など)と収斂したとされる。最も顕著な例はその強大な顎基に見られ、これは大顎類に特有の3対の口器である大顎(1対)と小顎(2対)のように、餌を粉砕・咀嚼できたと考えられる。ただし機能的分化が顕著な大顎(主に硬組織を粉砕する役を担う)と小顎(主に餌を細かく咀嚼する役を担う)とは異なって、ハベリアは5対の顎基があるにも関わらず全てがほぼ同形であった。これによりハベリアの顎基はまるで5対の大顎のように機能し、より単調で強大な粉砕力を発揮できたと考えられる。他にも正面に突出した歩脚型外肢は(鋏角類にはなく、大顎類がつ)触角のように周りを探知し、第7対の付属肢は昆虫の下唇・一部の甲殻類の顎脚・ムカデの顎肢のように摂食を補助する付属肢であったと考えられる。 これによりハベリアをも含んだハベリア類は、硬い外皮組織をもつ小動物を捕らえる小型捕食者であったと考えられる。ハベリア類はおそらくカンブリア紀における基盤的な鋏角類として、一部の基盤的な大顎類(例えばHymenocarina類)やArtiopoda類(例えばシドネイアなど)と共に、硬組織をもつ動物を狙う捕食者/腐肉食者のニッチ(生態的地位)を占める節足動物の一つであったと考えられる。
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