人種理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/23 03:00 UTC 版)
ギュンターの理論は概ね当時流行していた「ノルディック・イデオロギー」(北方人種至上主義)に基づいている。彼の母校フライブルク大学の教授には、ドイツ人種学の大家でノルディック・イデオロギーによる優生学を主張したオイゲン・フィッシャー(ドイツ語版)がおり、ギュンターが影響を受けた可能性は高い。また、ギュンターはアメリカ合衆国のマディソン・グラント(英語版)の理論も取り入れている。ヒトラーはグラントの『偉大な人種の消滅』を「私の聖書」と呼んで愛読していた。 ギュンターは白人を、北方人種・西方人種・東方人種・東バルト人種・ファリック人種・ディナール人種の6分類に分割した。このうち、西方人種と東方人種はより頻繁に用いられている地中海人種(西方)とアルプス人種(東方)の代替用語で、定義はほとんど変わらなかった。ファリック人種は後の著作になるにつれて、次第に棄却された。東バルト人種はアルプス人種のうち東欧からロシアの住民を指したもので、ディナール人種はバルカン半島のアルプス人種を指した用語であり、ギュンター以前から用いられていた。 彼の理論において、北方人種は主たる人種として欧州文明を築いた偉大な種族であり、ヨーロッパ史の優れた文明の全てが彼らによって始められたとギュンターは強弁した。そしてキリスト的価値観からユダヤ教徒(セム種族とも)は、ヨーロッパ文明を阻害するためにアジア人によって打ち込まれた楔であると批判した。他の白人種については西方人種、東方人種、ディナール人種は北方人種ほどではないが、北方種を支えてきた勇敢で賢明な種族として賞賛した。しかし反対に東バルト人種は北方人種との近縁性を徹底して否定した上で「劣等人種」と定義した(「欧州史における人種」)。 彼のこうした理論はナチスによる占領政策によって現実に反映されることになった。全く科学的客観性と根拠に欠ける恣意的な人種優劣論に過ぎない。
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