交響曲の番号
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/02 14:32 UTC 版)
ベートーヴェン以前は交響曲に限らず、絶対音楽をジャンル別に区分し、作曲あるいは出版順に通し番号を付与するという発想や習慣がなかった。ベートーヴェン以降の作曲家が複数の交響曲を作曲した場合、作曲者や出版社によって「交響曲第○番」というように通し番号が付けられはじめた。ただし作曲者が習作にはあえて通し番号を与えなかったり、あるいは作曲順に出版することをせず、作曲順と異なった通し番号が与えられた場合、後世の研究者が付与する場合がある。 具体的には、かつてはドヴォルザークの「新世界より」は出版順に第5番とされていたが、のちの研究により作曲順に通し番号が与えられ、第9番に変更されている。シューベルトの場合、元来は「未完成」やホ長調のオーケストレイション未完成稿(D 729)が知られるようになる以前に再発見された「ザ・グレイト」が第7番とされてはいたが、その後の検証により、D 729に第7番、「未完成」に第8番が付与され、「ザ・グレイト」に第9番が付与された。この通し番号は一旦は慣れ親しまれたものの、さらにその後、D 729が通し番号から外されることとなったため、7番「未完成」、8番「ザ・グレイト」と繰り下がるようになった。ただし、ながらく慣れ親しまれた都合上、7(8)番「未完成」、8(9)番「ザ・グレイト」と併記されることも多い。 またブルックナーのように第1番が作曲される前に作曲された交響曲には番号が与えられず(習作の慣例)、第1番のあとに作曲された交響曲に作曲者自身が第0番という番号を与えた場合、現状では番号の入れ替え、第1番からの順送り通し番号といった変更はなされていない。また、メンデルスゾーンの交響曲ように作曲順に変更されず、定着した出版順の通し番号が用いられている場合もある。 マーラーは第9番目の交響曲のナンバリングに忌み嫌いを持ち、9番目の交響曲を単に交響曲『大地の歌』としたものの、その次に作曲した交響曲を第10番とはせず、第9番としたケースがある。 ベルリオーズは『幻想交響曲』(op.14a)、『イタリアのハロルド』(op.16)、『劇的交響曲ロメオとジュリエット』(op.17)、『葬送と勝利の大交響曲』(op.15)と4曲の標題音楽的交響曲を発表し、また、この系列としてリストの『ファウスト交響曲』と『ダンテ交響曲』や、チャイコフスキーの『マンフレッド交響曲』、リヒャルト・シュトラウスの『家庭交響曲』(op.53)と『アルプス交響曲』(op.64)、シベリウスの『クレルヴォ交響曲』などは標題交響曲とも呼ばれる交響詩と交響曲の中間的存在であり、作曲者も出版社も番号を与えないことが多い。 その他ではヴォーン・ウィリアムズは『海の交響曲』(第1番)、『ロンドン交響曲』(第2番)、『田園交響曲』(第3番)、『南極交響曲』(第7番)の4曲の表題交響曲にナンバリングをしたものの番号は括弧に入れて、ナンバリングで呼ばれることを望まなかったケースがある。 なお、ドイツやオーストリアでは、モーツァルトや番号に議論のあるシューベルトの交響曲を番号無しで調性、およびケッヘル番号やドイッチュ番号などの作品番号だけで呼ぶこともある。
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