交換-相関汎関数
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/25 05:02 UTC 版)
「局所密度近似」、「一般化勾配近似」、および「混成汎関数」も参照 DFTの大きな問題は、自由電子ガスに対するものを除いて、交換および相関に対する正確な汎関数が知られていないことである。しかしながら、特定の物理量をかなり正確に計算することができる近似が存在する。最も単純な近似の1つが局所密度近似(LDA)であり、汎関数は座標中の各点での電子密度にのみ依存する。 E XC LDA [ n ] = ∫ ε XC ( n ) n ( r ) d 3 r {\displaystyle E_{\text{XC}}^{\text{LDA}}[n]=\int \varepsilon _{\text{XC}}(n)n(\mathbf {r} )\,\mathrm {d} ^{3}\mathbf {r} } 局所スピン密度近似(LSDA)は電子スピンを含めるようにしたLDAの単純明快な一般化である。 E XC LSDA [ n ↑ , n ↓ ] = ∫ ε XC ( n ↑ , n ↓ ) n ( r ) d 3 r {\displaystyle E_{\text{XC}}^{\text{LSDA}}[n_{\uparrow },n_{\downarrow }]=\int \varepsilon _{\text{XC}}(n_{\uparrow },n_{\downarrow })n(\mathbf {r} )\,\mathrm {d} ^{3}\mathbf {r} } LDAにおいて、交換–相関エネルギーは典型的に交換部分と相関部分に分割される。 εXC = εX + εC 交換部分はディラック(またはスレイター)交換と呼ばれ、εX ∝ n1/3という形を取る。しかしながら、相関部分については多くの数学的形式が存在する。相関エネルギー密度εC(n↑, n↓) に対する精度の高い式はジェリウムの量子モンテカルロシミュレーションから構築されてきた。単純な第一原理相関汎関数も最近提唱されている。 LDAは密度がどこでも同じであることを仮定する。このため、LDAは交換エネルギーを過小評価し、相関エネルギーを過大評価する傾向を有する。交換および相関部分による誤差はある程度互いに相殺し合う傾向がある。この傾向を補正するため、真の電子密度の不均質性を考慮に入れるために密度の勾配の観点から拡張するのが一般的である。これによって、ある座標から離れた密度の変化に基づいた補正が可能となる。これらの拡張は一般化勾配近似(GGA)と呼ばれ、以下の形式を持つ。 E XC GGA [ n ↑ , n ↓ ] = ∫ ε XC ( n ↑ , n ↓ , ∇ n ↑ , ∇ n ↓ ) n ( r ) d 3 r {\displaystyle E_{\text{XC}}^{\text{GGA}}[n_{\uparrow },n_{\downarrow }]=\int \varepsilon _{\text{XC}}(n_{\uparrow },n_{\downarrow },\nabla n_{\uparrow },\nabla n_{\downarrow })n(\mathbf {r} )\,\mathrm {d} ^{3}\mathbf {r} } 後者(GGA)を使って、分子の幾何構造と基底状態エネルギーに対する非常に良い結果が得られている。 GGA汎関数よりも潜在的により正確なのがGGA後の自然な発展であるメタGGA(meta-GGA)汎関数である。その原形式のメタGGA DFT汎関数は電子密度の二次導関数(英語版)(ラプラシアン)を含むが、GGAは交換-相関汎関数において密度とその一次導関数のみを含む。 この種の汎関数には、例えば、TPSSやミネソタ汎関数(英語版)がある。これらの汎関数は展開にさらに項を含み、電子密度、密度の勾配、および密度のラプラシアン(二次導関数)に依存する。 エネルギーの交換部分を表わす困難さはハートリー=フォック理論から計算される正確な交換エネルギーの成分を含めることによって軽減することができる。この種の汎関数は混成汎関数として知られている。
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