丹後のはた音
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/06 10:29 UTC 版)
丹後地域の主要産業である丹後ちりめんに代表される絹織物業は、いまなお生産量日本1位であるものの、明治期から昭和初期にかけての全盛期に比べて大きく規模を縮小し、21世紀においては斜陽産業とみなされる。その盛衰の陰にある人々のくらしが忘れ去られることを憂いた世津子は、「丹後のはた音編集グループ」を結成。竹野郡丹後町・弥栄町・網野町・与謝郡与謝野町の各町の現場を取材し、『丹後のはた音:織物産業を支えた人たちの記録』という記録集として出版した。旧丹後町の婦人会を中心とし、明治末から昭和初期を生きた女性の「自分史」であるとともに、丹後機業のあゆみや丹後ちりめんそのものについて、写真や図解を多用してわかりやすく解説した1冊となっている。世津子自身は機屋の育ちではないため、機女の苦しみを知らない。そのかわりに、本書においては「丹後機業に光を求めて」と題し、この伝統産業を守るべく独創的な努力を続ける民谷螺鈿や田勇機業など10社以上を訪ね歩いた取材記録を執筆している。 享保年間に創織された丹後ちりめんは、明治期に海外にも進出し、隆盛を極める。しかし、文書に残される機屋の名は男性名のみが知られるものの、実際に機業を支えたのは家庭内における女性や子供の労働力であった。その生の声を記録した文書はそれまでほとんど存在せず、『丹後のはた音』はのちの研究者にとっても貴重な基礎資料のひとつとなっている。
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