中華民国の正統性と日本
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 09:41 UTC 版)
「台湾正名運動」の記事における「中華民国の正統性と日本」の解説
台湾正名運動は、当初は日本政府が行なう台湾人の国籍取り扱いにおける不行き届きを修正する運動であった。だが運動が進むにつれて、日本政府が行なう台湾人の国籍取り扱いは、台湾の統治国家である中華民国の正統性が問われる問題であることが判明した。 元来、中華民国は中国大陸を統治する「中国 (China) の国家」として建国された国家であり、1948年成立の中華民国政府も自国を「中国の国家」として自認していた。だが、国共内戦によって中国大陸に中華人民共和国が建国され、中華民国の統治区域がほぼ台湾のみに限定されるようになると、国際社会における中華民国の「中国の国家」としての正統性は危ういものとなり、1971年には、国際連合によるアルバニア決議で「中国の国家」としての正統性を否定された。中華民国は大多数の国から「中国の国家」としての承認を失ったが、今日に至るまで「中国の国家」としての正統性を自認し続けている(詳細は中華民国の政治を参照)。 日本における台湾人の国籍取り扱い問題も、その由来は中華民国の「中国の国家」としての正統性にある。中華人民共和国建国後も、日本は中華民国の「中国の国家」としての正統性を承認し続け、台湾人を含む中華民国国民のことを「中国人」として出入国管理を行っていた。1972年の日中国交正常化以降、日本は中華民国の「中国の国家」としての正統性を承認しなくなり、以後公式には中華民国を国家として扱わなくなった。これは「日中平和友好条約」において、日本国は中華人民共和国を唯一の「中国の国家」として待遇せねばならない、と取り決められたためである。 これにより、日本における出入国管理上の「中国人」は中華民国国民から中華人民共和国国民へと変更されたが、その際に日本政府は「台湾は中華人民共和国の一部」であると中華人民共和国が主張した事と、中華民国が依然「中国の国家」としての正統性を自認し続けていた事から、中華民国国民という「中国人」として扱われていた台湾人はそのまま「中国人」の一部として出入国管理上扱われることとなった。一方で出入国管理上、中華人民共和国と中華民国(台湾)を区別する必要から両国民は「中国」(中華人民共和国)、「中国(台湾)」(中華民国)と区別されていた。 台湾人が「中国人」として扱われるようになったのは、台湾がカイロ宣言に基づき、終戦後の中華民国による進駐に伴い事実上の「中国領」となったため、当時台湾にいた日本人は日本本土へ帰ることができたが、台湾住民(本島人)は日本国籍を自動的に剥奪され、中華民国籍となったことに始まる。
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