中心柱の進化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/21 16:10 UTC 版)
中心柱の様式は、伝統的に維管束植物の進化、系統を考察する際に重視されている。上記のような中心柱の型に基づく系統論は中心柱説 (stelar theory) とよばれる。 リニア属など初期維管束植物の絶滅群には単純原生中心柱が見られ (右図)、これが最も祖先的な中心柱であると考えられている。原生中心柱は、全ての維管束植物の根にみられ、またヒカゲノカズラ類の茎にも存在する。種子植物の根における原生中心柱 (放射中心柱) では、木部と師部の間に維管束形成層が生じて二次成長 (肥大成長) を行う。また化石種の中には、茎の原生中心柱 (または管状中心柱) でも二次成長を行うものが知られている (リンボク、ロボクなど)。ただしこのような植物において形成される二次維管束はわずかであり、またほとんどの場合二次師部は形成されない。 原生中心柱の中心に髄ができることで、管状中心柱が形成される。管状中心柱は、狭義のシダ植物の茎に多くみられる。原生中心柱の中には中央に髄が形成されているものがあり (有髄原生中心柱 medullated protostele)、外師管状中心柱との中間型と考えられている。また葉隙が多く形成されることで網状中心柱が形成される。古くは、このような網状中心柱が進化的に種子植物の真正中心柱につながったと考えられたこともあるが、現在では真正中心柱は原生中心柱から直接生じたものと考えられている (下記)。 種子植物の祖先において、原生中心柱が放射方向に分断化することによって真正中心柱が成立したと考えられている。種子を獲得する以前の種子植物の祖先群である原裸子植物では、原生中心柱の分断化、真正中心柱の成立を示す化石記録が残されている。また真正中心柱は成立時から二次成長 (肥大成長) と関連しており、原裸子植物は基本的に全て木本性である。また現生維管束植物の中で明らかな二次成長を行う種は茎に真正中心柱をもつ。種子植物の中で、単子葉植物では維管束が輪状に配列されず散在することで不整中心柱が形成される。このことは、単子葉植物が維管束形成層による二次成長能を欠いていること (輪状の維管束形成層を形成する必要がない) や葉跡 (葉に入る維管束) を多く生じることと関係していると考えられている。また水生の被子植物の中には、真正中心柱が二次的に退化して原生中心柱的な形になったものがある (退行中心柱)。
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