中国の海洋進出と周辺諸国の建艦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:28 UTC 版)
「建艦競争」の記事における「中国の海洋進出と周辺諸国の建艦」の解説
2017年現在、最も精力的に海軍力増強を進めている国の一つが中華人民共和国である。同国の建艦政策は1996年を境に大きく変動した。この年に生起した第三次台湾海峡危機が発端である。台湾への圧力を強めた中国に対して、アメリカ海軍は空母戦闘群2個に敢えて台湾海峡を通航させる挙に出た。 かつてのキューバ危機同様、アメリカの海軍力プレゼンスに対して対抗する手段を持たなかった中国は、空母接近阻止を爾後海軍戦略の主要な一柱に位置づけることとなる。アメリカの空母機動部隊を南シナ海、さらには西太平洋から追い払い、そこに生じた力の空白部に自らが進出する列島線戦略が推し進められた。特に21世紀に入って以降の中国海軍の近代化は他国に類例が見られないほど急速に進行しており、旧式艦艇の大半が置き換わり、あるいは増強されつつある。悲願であった国産空母の建造も進んでおり、2017年中には第一艦が進水し、2020年中に就役すると見込まれている。2030年頃には空母4隻、弾道ミサイル潜水艦12隻、攻撃型原子力潜水艦12隻等を含めた415隻規模の海軍に成長するとの観測もある。 この動きに周辺諸国も反応した。中国の海洋進出は明らかに従来のパワーバランスへの挑戦であり、2017年現在、南シナ海南沙諸島はすでに中国が実効支配を進めて新たな戦略環境構築をほぼ完了してしまった。同海域に利害関係を有する諸国を中心に、東アジア諸国はそれぞれ対抗戦力としての建艦を進め始めている。特に顕著な特徴は潜水艦の増強で、それまで保有していなかった諸国が新たに保有したり、既存の潜水艦戦力の増勢を図る動きがほぼ共通して確認されている。 アメリカも再び増勢に転換しようとしている。2016年現在の構想では、2016年現在の282隻を30年後には302隻に増強する計画であるが、ドナルド・トランプ政権下でさらに構想が推し進められ、335~350隻程度まで拡大する案も浮上している。彼は大統領選挙において350隻体制への増強を公約として掲げ、それを受けた海軍は2016年12月15日、355隻体制を求める提案を行った。内訳は空母12隻、弾道ミサイル潜水艦12隻、攻撃型原子力潜水艦66隻等である。
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