三代の王権とアテーナーの誕生
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/16 22:00 UTC 版)
「アテーナー」の記事における「三代の王権とアテーナーの誕生」の解説
ヘーシオドスが『神統記』に記すところでは、アテーナーはゼウスの頭頂部より武装して鎧を纏った姿で出現したとされる。 ギリシア神話の神々の系譜においては、オリエントの神々の系譜と同様に、三世代にわたる神々の「王権」の移譲・強奪があった。ギリシア神話では、天の神ウーラノスが第一の王権を持ち、原初の大地大神ガイアとの間に多数の息子・娘をなした。これがティーターンの一族である。ウーラノスの末子がクロノスであり、クロノスは母ガイアに教唆されて、絶対の権力を振るった父ウーラノスを不意打ちで攻撃し、ウーラノスの男性器を切り落とした。こうしてクロノスが神々の王権の第二の支配者となる。しかしクロノスはガイアとウーラノスの予言によって、彼もまた自分の子によって支配権を奪われるだろうとされたため、生まれてくる子供達を飲み込んだが、ゼウスだけはクレタ島に逃れ、やがて成長したゼウスは兄弟姉妹達を復活させ、クロノスの王権を簒奪する。 このようにしてゼウスを主権者とするオリュンポスの王権が誕生したが、ゼウスもまたガイアとウーラノスによる予言を受けた。それは、最初の配偶者である女神メーティスとの間に生まれる子供は、最初に、母に似て智慧と勇気を持つ娘が生まれ、次には傲慢な息子が生まれるだろう。そしてゼウスの王権は再度、彼らによって簒奪されるだろうというものである。その後メーティスが身籠もると、ゼウスは妊娠したままのメーティスを素早く飲み込み、禍根を断とうとした。 アポロドーロスが『ギリシア神話』で述べるところでは、胎児は、ゼウスの身体の中で生き続け成長し、ゼウスは激しい頭痛を感じるようになったため、プロメーテウスに(また一説では、ヘーパイストスに)斧(ラブリュス)でみずからの頭部を割らせると、中から出てきたのが、甲冑を纏った成人した姿のアテーナーであった。アテーナーが生まれると同時に、宇宙は大きくよろめき、大地と大海は轟音を発しながら揺れ動き、太陽は軌道上で停止した。こうして、形式上、アテーナーを生んだのはメーティスではなくゼウス本人だということになったので、ゼウスによるオリュンポスの支配は揺らぎないものとなった。ゼウスの子供たちの中で、アテーナーはゼウスの最も気に入りの娘であり、アテーナーに対する偏愛により、他の神々は嫉妬した。
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