万民の法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 16:06 UTC 版)
ロールズは、The Law of Peoples, Harvard UP, 1999(『万民の法』岩波書店,2006)において、国内法の枠を越えた普遍妥当性を有する「万民の法」について論じている。 まず民衆(people)を次の5つに分類する。 1道理をわきまえたリベラルな諸国の民衆(reasonable liberal peoples) 2良識ある諸国の民衆(decent peoples) 3無法国家(outlaw state) 4不利な条件の重荷に苦しむ社会 5仁愛的絶対主義(benevolent absolutism)の社会 このうち1と2は「秩序だった諸国の民衆」とされ,「万民法」はこの2つの国の民衆に妥当するとされる。 さらに、民主主義平和論(democratic peace)を論じるなかで「立憲民主制社会同士が互いに戦争を始めるようなことはない」とする。その理由は、「そうした社会の市民がとりわけ正義を尊重するよき人々だからというわけではなく,ただ単に,彼らにはお互いに戦争をする理由がない」からである。近代初期ヨーロッパの国民国家群における王朝間戦争とは異なり、民主的社会は、自衛や、人権を守るために不正な社会へ介入することなどの危機的ケースを除けば,自ら進んで戦争を開始することはないとされる。 またロールズは民主的社会が戦争をするとすれば、それは無法国家との戦争であるとし、「リベラルな民衆は戦争を行うが,それは,自分たちのリベラルな文化の自由と独立を守り,自分たちを従属させ,支配しようとする国家に真っ向から対抗しなければならないからである。」として、「民主的な社会による戦争」を正当化する。 ほか、民主的社会を従属させようとする無法国家に対しては、非寛容的であるべきだとする。「好戦的で,危険な無法国家」への対策としては、核兵器所有およびその抑止力論を展開した。ほかにも第二次世界大戦中にイギリスによるドイツ空爆をその現実的必要性から擁護した。なお日本への原爆投下については、その不要性から米国政府を批判した。
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