ロールズの政治理論での使用法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/27 16:10 UTC 版)
「反照的均衡」の記事における「ロールズの政治理論での使用法」の解説
反照的均衡は、ロールズの理論のなかで、正当化における重要な機能を果たしている。しかしながら、この機能の本質が何であるかについては議論がある。支配的な見解は、ノーマン・ダニエルズやトマス・スキャンロンの研究に代表されるもので、反照的均衡という方法は、道徳的信念を認識論的に正当化するための整合主義的な方法だというものである。しかしながら、その他の研究者は、ロールズは、彼の理論が道徳的認識論を含む伝統的なメタ倫理学的な問いを避けており、反照的均衡は実践的な機能を果たしていると主張しているとしている。この見解において、反照的均衡の方法は、人間の正義の感覚の認知的な側面と道徳的な側面を適切な仕方で結びつけることによって正当化の機能を果たしていることになる。 ロールズは、正義の候補となる原理は、それが安定的ではない限り正当化されえない論じている。正義の原理が安定的であるのは、とりわけ、社会の成員が正義の原理を権威的であり遵守可能であるとみなす場合である。反照的均衡の方法は、原理の範囲を人間の正義感覚に根ざして決定する。人間の正義感覚は、反照的均衡のプロセスのための素材を提供し、道徳的に健全であると判断できる原理に従うための動機づけを提供する。反照的均衡の方法は、私たちの道徳的動機づけの源泉に正しい仕方で基礎づけられた実践的に一貫した原理の組み合わせを定めることによって、現実的で安定した社会秩序を確定するという目的に資する。フレッド・ダゴスティーノの言葉を借りれば、安定的な正義の原理は、社会の成員によって好意的に「取り込ま」れることを要請する。反照的均衡の方法は安定性に必要とされる種類の「取り込み」を達成する原理を定める方法を提供するのである。 反照的均衡は、静的なものではない。ロールズは暫定的な定点を許容したが、暫定的な定点は、個人が個々の争点についての自らの意見を考慮し、その原理の帰結を探求した場合に変化する 。 ロールズは、人々が社会契約に対して合意する場である仮説的な「原初状態」というアイデアにこの反照的均衡を適用した。ロールズは、正義についての適切な理論は、人々が無知のヴェールの背後にあり、自らの社会的立場などについての知識をもたないときに合意するであろうものであるという結論に到達した。
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