ローマ法の現在
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/09 14:16 UTC 版)
現在、ローマ法はもはや法実務においては適用されておらず、南アフリカやサンマリノのような一部の国の法制度が、今もなお旧来のユス・コムーネに基礎を置いているのみである。 しかしながら、法実務が(近代的な)法典に基礎を置いているとしても、担保責任を始め多くの法制度ないし規範がローマ法に由来しており、ローマ法の伝統と完全に断絶している法典は存在しない。むしろ、ローマ法の規定をより時代に密着した制度として適合させ、その国の言葉で表現したのが近代的な法典である、とすらいえよう。ローマ法の影響は法律学の用語にも広く及んでおり、契約締結上の過失(ドイツ民法典311条)、合意は守られるべし 、先例拘束の原則といった例がある。そのために、ローマ法の知識は今日の法制度を理解する上で不可欠なものである。それゆえ、大陸法圏においては、しばしばローマ法が法学部生の必修科目とされるのである。 日本では、戦前はローマ法の履修が重要視されていたが、戦後はそのような傾向はなくなった。もっとも、契約締結上の過失は不法行為責任として裁判例でも認められており、また、合意は守られるべしとの原則も明文の規定はないが、解除には帰責事由がなければ許されないとの解釈の下に定説として認められており、日本法にも少なからぬ影響を及ぼしている。 現在、EUでは、統一的な法制度の策定が試みられている。1999年6月19日、2010年までにヨーロッパ全域に統一的な大学の枠組を確立するとするボローニャ宣言を発表した。これは、法曹養成のグローバル化対応を図るため、アメリカ合衆国のロー・スクール制度のように、3年の学士課程に加えて2年の修士課程を設け、5年間の専門的で統一的な履修制度をヨーロッパに導入すべきとするものである。このような試みもかつてローマ法が各国の枠を超えて共通の法として通用していた歴史があればこそと言われている。
※この「ローマ法の現在」の解説は、「ローマ法」の解説の一部です。
「ローマ法の現在」を含む「ローマ法」の記事については、「ローマ法」の概要を参照ください。
- ローマ法の現在のページへのリンク