ロックギターのスタンダードへ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 19:58 UTC 版)
「フェンダー・ストラトキャスター」の記事における「ロックギターのスタンダードへ」の解説
ストラトキャスターが、エレキギターのスタンダードとなる上で最も重大な役割を演じたのはジミ・ヘンドリックスである。 1950年代には、ハンク・マーヴィン(シャドウズ)やバディ・ホリーなどがストラトキャスターを使用していたが、1960年代半ばには人気が低下し使用するミュージシャンもほとんどおらず、製造中止も検討されていた。しかし1966年にジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスがデビューして、この状況は大きく変化する。ヘンドリックスは、大音量のマーシャルのギターアンプにストラトキャスターを接続し、ギブソン社のレスポール・モデルにも劣らないディストーション・サウンドを引き出した。またシンクロナイズド・トレモロを生かした変幻自在の演奏(アーミング)も相まって、ストラトキャスターが持つロック用エレキギターとしての潜在能力の高さを見せつけたのである。 ヘンドリックスの影響を受けてストラトキャスターを手にしたのが、エリック・クラプトンやジェフ・ベックである。 クラプトンによるストラトキャスターの演奏は、ヘンドリックスとはかなり対照的である。ヘンドリックスほどは音を歪ませず、シングルコイル・ピックアップ本来の音色を生かした彼の演奏は、ストラトキャスターの新たな魅力を引き出した。ハーフトーン(センター・ピックアップとのミックスポジション)を一般化させたのも、彼の功績であるという意見がある(ハーフトーン自体は、ヘンドリックスなども使用しており、前記の意見に反論する意見もある)。なお、クラプトンはトレモロ・ユニットを使わず固定し、アームを外している。 ヘンドリックスに多大な影響を受け、そのアクロバティックな側面を受け継いだギタリストの一人に、ディープ・パープルやレインボーで活躍したリッチー・ブラックモアがいる。彼は、ストラトキャスターの唯一の弱点とも言える出力不足を、ピックアップを高出力のシェクター製のF500やセイモア・ダンカン製のSSL-4(クオーター・パウンドタイプと呼ばれる一般的なシングル・コイルピックアップのポールピースの径より大きいタイプのもの)に交換することで補い、ストラトキャスターがハードロックにも十分通用することを証明して見せた。 また、ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアもストラトキャスターを愛用しており、彼の場合は1970年代後半から1980年代においては、ピック・アップをディマジオ社の「スーパーディストーション」に交換して使用していた。彼のように、ピック・アップをスーパーディストーションに交換するのは当時の流行であり、多くのミュージシャンが模倣している。ちなみに、ペグをシャーラー社のものに交換するのも当時の流行であった。 ジャズ/フュージョン系やブルース系、ソウル系のギタリストの中にも、ストラトキャスターを愛用する者が増えた。ブルース系ギタリストではバディ・ガイやロバート・クレイ、スティーヴィー・レイ・ヴォーンなどが、ジャズ/フュージョン系ではハイラム・ブロック、デビュー当時のマイク・スターンなどが、有名なストラト愛用者である。こうしてストラトキャスターは、ソリッド・ボディ・エレキギターの定番中の定番として、その地位を不動のものとする。
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