ロジスティック方程式からの発展
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/18 14:31 UTC 版)
「ロジスティック方程式」の記事における「ロジスティック方程式からの発展」の解説
その後は、より現実的な個体群変動を表すことができるように、ロジスティック方程式を修正したモデルが提案されてきた。1948年には、ジョージ・イヴリン・ハッチンソンが時間遅れの影響をロジスティック方程式に導入した研究を行った。ロジスティック方程式の前提条件を満たすような環境であっても、個体数が一定に収束せず、多くなったり少なくなったりをいつまでも繰り返すような生物実験の結果も得られた。京都大学の内田俊郎と藤井宏一がヨツモンマメゾウムシの培養実験でそのような結果を得たことを1953年に発表している。内田らは、ロジスティック方程式をもとにした差分方程式でこの結果を分析し、個体数の振動を再現した。 ロジスティック方程式における r は個体群密度がとても低いときの増加率で表しており、密度が低いときにどれだけ素早く繁殖できるかを意味している。また、K はその環境下で生存できる個体数あるいは個体群密度の上限を示す。1967年、ロバート・マッカーサーとエドワード・オズボーン・ウィルソンは、この r と K に着目して、島における生物個体群の定着と絶滅に関する理論を発案した。彼らの理論によれば、ある生物の島への定着が成功するには大きな r を持つことが重要であり、絶滅の回避には大きな K を持つことが重要であるとし、それぞれの方向へ淘汰されることを r淘汰、K淘汰と呼んだ。この説はr-K戦略説と呼ばれ、生物の生活史の進化に種内競争の観点から説明を与えた。 物理学から数理生態学へ転向してきたロバート・メイも個体群変動の問題に取り組んだ。メイはロジスティック方程式の離散化を行い、その式の解は、通常のロジスティック方程式の解とは全く異なる、現在ではカオスと呼ばれる非常に複雑な振る舞いを起こすことを示した。この結果は1974年と1975年に発表され、大きな反響を得ると共に、その後のカオス理論の隆盛に大きく寄与することになる。
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