ルドヴィコ療法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 19:20 UTC 版)
「時計じかけのオレンジ」の記事における「ルドヴィコ療法」の解説
アレックスは懲役14年の実刑判決を下され、収監されて2年が経とうとしていた。牧師と懇意になるような模範囚を装っていたアレックスは、内務大臣にキリスト教への信仰心とクラシック音楽の趣味を見出され、さらに犯罪歴から野心を気に入られ、「ルドヴィコ療法 (Ludovico technique)」の被験者となることと引き換えに刑期短縮の機会を得る。12年の獄中生活から逃れるため、アレックスは志願した。 治療のためアレックスは施設に移送された。その治療は、被験者に投薬を行った上で拘束服で椅子に縛り付け、“リドロック”のクリップでまぶたを見開いた状態に固定し、眼球に目薬を差しながら残虐描写に満ち満ちた映像をただじっと鑑賞させ続けるというものだった。投薬によって引き起こされる吐き気や嫌悪感と、鑑賞中の暴力的映像を被験者が「連係」することで、暴力や性行為に生理的拒絶反応を引き起こすように暗示するのである。映像のBGMに使われていたのは、偶然にも彼が好んで聴いていたベートーヴェンの第九であった。これによりアレックスは、最も敬愛する第九を聴くと吐き気に襲われ倒れてしまう身体となる。 治療は成功し、以後彼は、性行為や暴力行為に及ぼうとすると吐き気を催すほどの嫌悪感を覚え何もできなくなってしまう。それは犯罪に向かう暴力の根本的解決ではなかった。そして出所前に医師たちの立会いのもとで催されたデモンストレーションでは、政府高官や関係者の前で治療の効果が証明された。一同が生まれ変わったアレックスを目の当たりにし喜ぶなか、刑務所でアレックスと親しかった教誨師は、彼が行っているのは苦痛からの逃避であり、自ら選択して行った善(暴力の拒否)ではないことを指摘する。アレックスは暴力に対して無防備となり、それに抗うことを選択する能力のない存在となった。それはまるで中身が機械でできている人間、『時計じかけの“オレンジ”』のようであった。
※この「ルドヴィコ療法」の解説は、「時計じかけのオレンジ」の解説の一部です。
「ルドヴィコ療法」を含む「時計じかけのオレンジ」の記事については、「時計じかけのオレンジ」の概要を参照ください。
- ルドヴィコ療法のページへのリンク