ラーメンに星降る夜の高円寺
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出 典 | 匙洗う人 |
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評 言 | 近頃、美味しいものや珍しい食べ物が巷に溢れている。私たちは少しぐらいの美味しさ、多少の珍しさではそれほど感動するということはなくなった。世はまさに飽食の時代である。その一方で賞味期限切れの食品などが大量に廃棄され、食品ロスと言う言葉をあちこちで耳にする。 そんな折り、ふと思い出すのが子供の頃に出会い、その味にショックと感動を受けたいくつかの食べ物である。 最初は何といってもラーメン(当時は支那そばと言った)だ。 小学六年のとき弟と二人、叔父の家に使いにやらされたことがあった。乗ったことのない電車で、それも途中で乗り換えがあった。私の家があったのは鳩山村(いわゆる田舎)と言って、秩父山系の東端に位置し、駅までは自転車で一時間近くかかる山村地帯であった。しかし叔父の家は浦和(いわゆる都会)にあった。 私と弟は電車をうまく乗り継いだものの「浦和」で道に迷った。浦和駅で電車を降り、父がメモに書いてくれたバスに乗り、言われたバス停で降り目印の病院らしき建物に向かって歩いた。しかし一向に次の目印である「浦和競馬場入り口」に着かなかった。私たちが暗い道を歩いているのを、探しに出た叔父夫婦が見つけてくれた。二人はバス停までの道を何回か往復したそうである。その時に「出前」でとってくれたのが「支那そば」であった。 私たちの目の前には大きな丼が置かれていた。叔父がこれは支那そばだと言って、勧めてくれた。「透明なビニール」で蓋がしてあり、それを外すと茶色で濁った汁にギトギトした脂が浮いていて頭上の電灯がきらきらと反射した。その汁からは茗荷と沢庵を混ぜたような妙な匂いが立ち登っていた。一口食ってみるとその妙な匂いの正体が分かった。沢庵のようでいて筍の固い部分のような歯応え、その「部品」を噛むと今まで鼻を突いた匂ひが塊となって口中で弾けた。これは初めて体験する味であった。叔父が「どうだうまいか、それはシナ竹だ」と言って笑った。 次にショックをうけた出会いは「豚カツ」である。これは中学生になってから。その次に高校時代の「コカ・コーラ」と「クリームソーダ」。そして大学に入ってから毎日のように食べていたスパゲッティ―の「ナポリタン」である。 それぞれに忘れられない思い出やエピソードがあるのであるがまたの機会に譲りたい。 |
評 者 | |
備 考 |
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