ライカーとオードシュックによるモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/06/12 20:52 UTC 版)
「投票行動」の記事における「ライカーとオードシュックによるモデル」の解説
ダウンズのモデルを発展・精緻化させたのがウィリアム・ライカーとピーター・オードシュックである。彼らは、有権者Aが投票するか棄権するかを、投票参加による利得に基づいて決定すると考え、それを規定する4つの独立変数を想定した。 R = P × B + D − C {\displaystyle R=P\times B+D-C} Pは、自分の投票行動が選挙結果に影響を与える確率(possibility)についての、有権者Aによる主観的予測である。その確率は、客観的にはゼロに近いが、ここではあくまで有権者本人が主観的に見積もったものである。 Bは、有権者Aにとっての政党間(候補者間)の期待効用差(benefit)である。これはダウンズのモデルにおける期待効用差と同じである。 Dは、投票に参加すること自体が長期的にはデモクラシーの体制維持に寄与するという信念の強さ(democratic value)、あるいは投票しなければならないという義務感(duty)である。より具体的には、(1)投票をすることにより有権者としての義務を果たしたとの満足感、(2)政治体制への忠誠を果たす満足感、(3)最も好む政策に支持を与える満足感、(4)投票での意思決定や意思決定のための情報収集に対する満足感、(5)政治システムにおける有権者の能力を確認したことによる満足感、がそれにあたる。 Cは、投票参加にかかる労力や費用(cost)である。これは、単に「投票所が遠くて時間がかかる」ということだけではなくて、「各党の政策の違いを調べて期待効用差を判断するには労力がかかる」、「投票のために仕事を休む」(機会費用)、「投票のために旅行をキャンセルする」なども含まれる。 Rは、以上の独立変数によって算出される、投票参加による有権者Aの利得(reward)である。このとき、R>0であれば有権者Aは選挙に行くと考えられ、逆にR<0であれば選挙を棄権すると考えられる。 確かに、有権者は、投票参加によって得られる利得を意識的に数値化して投票するか棄権するかを決定しているわけではない。しかし、一般的公式R=P×B+D-Cは次のような含意を持つ。すなわち、それぞれの独立変数に切り分けて検討することで、投票率を下げている要因や、逆に投票率を上げる方策を考えることができる。 選挙が接戦だと、Pの値が大きくなるので、投票率が上がる。 投票日が雨天だと、Cの値が大きくなるので、投票率が下がる。 各党のマニフェストが入手しにくいと、有権者が政党間の期待効用差を測りかねたり(B=0)、期待効用差を判断するのに労力を要したりする(Cの値が大きくなる)ので、投票率が下がる。 期日前投票制度の創設や投票時間の延長は、Cの値を小さくするので、投票率を上げる。
※この「ライカーとオードシュックによるモデル」の解説は、「投票行動」の解説の一部です。
「ライカーとオードシュックによるモデル」を含む「投票行動」の記事については、「投票行動」の概要を参照ください。
- ライカーとオードシュックによるモデルのページへのリンク