ヨルゲンセンのジレンマ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/04 21:05 UTC 版)
論理学の主要な関心の一つは、論理的妥当性である。命令文を用いた推論は妥当でありうるように思われる。次の推論を考えよ。 P1. 机からすべての本を取り去れ。 P2. 『算術の基礎』が机の上にある。 C1. ゆえに、『算術の基礎』を取り去れ。 しかし、ある推論が妥当であるのは前提から結論が導かれる場合である。これは、結論を信じるべき理由を前提が与えてくれるという意味であり、あるいは別の表現をすれば、前提の真理性が結論の真理性を決定するという意味である。命令文は真でも偽でもなく、信念の適切な対象でもないので、論理的妥当性の標準的説明のいずれも命令文を含む推論には適さない。 ここにジレンマがある。命令文を含む推論は妥当でありうるか妥当でありえないかのどちらかである。一方では、そうした推論が妥当でありうるならば、われわれは新たな(もしくは拡張された)論理的妥当性の説明とそれに伴う詳細を必要とする。しかしそうした説明を与えることは困難であるように思われる。他方、もしそうした推論が妥当ではありえない(そうした推論はすべて非妥当であるかあるいは妥当性という概念は命令文には適用できないという理由で)ならば、上記の推論に関するわれわれの論理的直観は間違いだということになる。いずれの答えも問題含みであるように思われるため、これはヨルゲンセンのジレンマとして知られるようになった。ヨルゲンセンのジレンマという名は、ヨルゲン・ヨルゲンセン(デンマーク語版)に由来する。 この問題はゴットロープ・フレーゲによって注のなかで最初に言及されたが、ヨルゲンセンによってより洗練した定式化が与えられた。
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ヨルゲンセンのジレンマ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 01:46 UTC 版)
義務論理にはヨルゲンセンのジレンマと呼ばれる問題がある。一般に、規範は真理値を持たないとされる。しかし、もし規範が真理値を持たないのだとすると、次の二つの文の間でジレンマに陥る。 論理的推論が成り立つには、その要素(前提と結論)が真理値をもっていなければならない。 規範的言明の間には論理的推論が成り立つ。 1と2のどちらも正しいように思われる。しかし1と2を同時に受け入れるとすると、論理的に矛盾する。これがヨルゲンセンのジレンマである。 考えられる解答としては主に以下の三つが知られる。 規範的言明は真理値をもつと考える。メタ倫理学の用語を用いれば、これは規範の実在論ないし認知主義を採用することに相当する。 規範(norm)と規範命題(norm-proposition)とを区別する。規範そのものは真理値をもたないが規範命題は真理値をもつと考えた上で、義務論理は規範命題を扱うのであって規範そのものを扱うのではないとする。 真理とは異なる概念を用いて論理的推論の妥当性を説明する。例えば、言語行為論で定義されるような、正当性(validity)や成功(success)によって規範的言明の推論の妥当性を説明する。
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