モンティーグルの手紙
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 17:17 UTC 版)
「火薬陰謀事件」の記事における「モンティーグルの手紙」の解説
ガーネットの友人で自宅によく神父を匿い、カトリック教徒の知人も多かったアン・ヴォークスなど、メンバーらの妻や友人などの親しい関係にある者の中には、彼らの行動を疑い出す者も現れ始めていた。また、メンバー内でも爆破の決行日に開会式に出席する予定のカトリック教徒の知人らの安否を心配する声が出てきた。パーシーは自分の主君であるノーサンバランド伯を心配し、若きアランデル伯の名前を挙げた。ケイツビーは、軽傷を負えば当日は出席できないのではないかと提案した。また、ヴォークス卿やモンタギュー(英語版)、トレシャムの義兄弟にあたるモンティーグル男爵やストートン卿といった各貴族の名前も挙がった。キーズは妻の雇い主であるモーダント卿を心配し、彼に警告を与えることを提案したが、ケイツビーはありえないとこれを嘲笑した。 10月26日土曜日、仲間内の打ち合わせでも名前が出たトレシャムの義兄にあたるモンティーグル男爵は、ホクストンの長らく使われていなかった家屋で食事を手配した。突然、召使いが現れ、道で見知らぬ人からモンティーグル卿への手紙を手渡されたと述べた。卿は、その手紙を皆の前で読み上げるように命じた。H・トレバー=ローパー(H Trevor-Roper)が「フランシス・トレシャムは事前に行ったこの策謀によって、陰謀を阻止するのと同時に、友人たちに警告を与えようとしたのである」と述べた手紙の内容は以下の通りである。 閣下、私はあなたの友人たちへの親愛から、あなたを守りたいと思っております。それゆえに、もしご自身のお命を大事に思っておられるのであれば、今回の議会出席を見送るための何らかの口実を設けるべきことを、私はご助言いたします。なぜなら、神と人は今回の邪悪な行為を罰することに同意しているからです。そして、この告知を少しも気にせず、自分のご領地に籠られ、安全に今後の出来事を予測できるようにしてください。まだ騒動が起きているようには見えませんが、私は今議会において彼らが酷い打撃(blow)を受けると思っています。しかし、彼らは自分たちを害する者を見ることはできないのです。この助言はあなたに役立ちこそすれ、害を与えるものではないので、非難されるいわれはありません。なぜなら、あなたがこの手紙を燃やした時点で、危険は去っているからです。私はあなたがこの助言を有効に活用するよう神が恵みを与えてくださることを願っています。神の聖なる保護があなたに委ねられんことを。 手紙の意味が分からないまま、モンティーグルはすぐにホワイトホールに向かい、国王秘書長官(英語版)ロバート・セシル(当時はソールズベリー伯)にこれを渡した。セシルは、国教忌避者に同情的だと思われていたウスター伯エドワード・サマセットと、カトリック教徒疑惑のあったノーサンプトン伯ヘンリー・ハワードにはこの事を伝えたが、ケンブリッジシャーでの狩猟に忙しく、数日は戻ってこないであろう国王には連絡をしなかった。一方、モンティーグルの使用人トマス・ワードは、ライト兄弟と家族ぐるみの付き合いがあり、ケイツビーに裏切りがあったことを伝えた。国王と一緒に狩りに行く予定であったケイツビーは、トレシャムを疑い、トマス・ウィンターと共に彼を詰問した。ケイツビーは「吊るしてやる」と脅したが、彼は密告の手紙は自分ではないと2人を説得し、翌日には手紙で計画を諦めるように促した。 セシルは手紙を受け取る前に策謀の臭いを嗅ぎ取っていたが、計画の全貌や誰が関与しているかは不明であった。このため、陰謀がどう展開していくか見定めるために、様子を見ることにしていた。
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