モモのお引越し
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 09:46 UTC 版)
モモの生後半年が経過した時分から、離乳が始まった。モモはパンやバナナ、リンゴなどを食べられるようになり、1歳の誕生日には体長150センチメートル、体重180キログラムに達していた。順調な成長を続けるモモには、飼育スペースが狭くなってきていた。 モモはさらに成長を続け、体長2メートル、体重350キログラムとなっていた。そこでモモを室内からカバ池に引っ越しさせることが決まった。いきなり両親であるドンやノンノンと同居させたとしても、2頭がモモを受け入れるという保証はなかった。しかもドンの体重は2100キログラム、ノンノンは1500キログラムあるため、モモの身に危険がおよぶ恐れがあった。伊藤たちは引っ越しの第一段階として、モモを両親と柵越しに「お見合い」させてモモよりも大きなカバに慣れさせることにした。 引っ越しは1996年7月16日に決行された。通常カバなどの大動物は、パーク内など短距離の移動でも頑丈な檻や箱に入れてトラックで運送するが、モモは人に慣れているためパーク内を歩かせながら移動させることになった。伊藤の目論見では、モモの足で30分程度でカバ池に到着する予定であった。 引っ越し当日は朝から暑かったが、モモの引っ越しを見るために多数の来園者とマスコミの取材陣がパークを訪れていた。通常と違う雰囲気をモモは感じ取った様子で、自分の部屋から出るだけで1時間を要してしまった。さらに日が高くなってパーク内のアスファルト通路が熱くなったため、モモはカバ池とは別方向に走り出した。伊藤は慌ててモモを制止したが、モモはまた走り出して伊藤も一緒にパーク内を走る羽目に陥った。それでもあと少しでカバ池に到着するところまでこぎつけたものの、モモは水路の金属製の蓋をいやがって立ち止まった。飼育係が6人で押してもモモは動こうとせず、その場を動くまでにまた2時間ほどかかり、パーク内の約1キロメートルを移動するのに3時間を費やす結果となった。 カバ池に到着したモモは、すんなりと専用の柵の中に入った。伊藤は我が子のように可愛がっていたモモが離れていくのがとても悲しかったというが、「あとはたのむよ」とドンとノンノンに話しかけた。そして心の中で「モモ、カバになれよ」と呟きつつカバ池を後にした。 伊藤の見たところでは、カバ池に引っ越した後のモモは柵越しに見るドンやノンノンとの日々を通じて、自らがカバであるという意識を少しずつ育てていた。それでもノンノンは柵越しにモモを威嚇していて、我が子であることはおろかカバの仲間として受け入れることさえ拒んでいた。やがてモモをノンノンと同居させる機会が訪れた。ノンノンは体調を崩してドンと離れて飼育されることになり、持ち前の気の強さがすっかり失せていた。伊藤はこれを好機ととらえ、飼育担当者を集めて2頭を同居させる準備にとりかかった。 1998年11月18日、伊藤は緊張の中でモモをノンノンがいる柵の中に導いた。ノンノンはモモに近づき、顔をすりつけあってともにカバ池に入っていった。ノンノンはモモを我が子ではなく、同じカバのメスとして受け入れていた。その後の2頭の関係は良好なものとなった。
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