ミヤマヒキオコシ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/11/13 03:43 UTC 版)
| ミヤマヒキオコシ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| Isodon shikokianus (Makino) H.Hara (1949) var. shikokianus[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| シノニム | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| 和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
| ミヤマヒキオコシ |
ミヤマヒキオコシ(深山引起こし、学名:Isodon shikokianus)は、シソ科ヤマハッカ属の多年草[6][7][8]。
特徴
茎は高さ30-80cmになる。葉は対生し、葉身は卵形で、長さ3-9cm、幅1.5-4cmになり、先端は鋭くとがり、縁には粗く鋭い鋸歯が生え、基部はくさび状になって葉柄につづく。葉の表面にまばらに毛が生える[6][7][8]。
花期は8-10月。萼は明らかな2唇形で、上唇は3裂し、裂片は狭三角状披針形となり先が細く伸びてやや反曲し、下唇は2浅裂し、上唇よりやや長くなり、裂片の先は鈍頭となる。果時の萼裂片の長さは4-5mmになる[6][7][8]。花序は茎先に1個でるか、各葉腋に多数でる[9]。花冠は青紫色で長さ5-7mmとなり、上唇は4裂する。雄蕊は4個あり、雌蕊1個ある。果実は4個の分果からなり、球形で長さ約1.8mmになり、表面は平滑である[6][7][8]。
分布と生育環境
日本固有種。本州の紀伊山地と四国に分布し[10]、深山の林内の木陰に生育する[6][8]。
名前の由来
和名ミヤマヒキオコシは、「深山引起こし」の意[6]。種小名(種形容語)shikokianus は「四国産の」意味[11]。牧野富太郎が高知県手箱山で採集したものをもって命名された[12][13]。
種の保全状況評価
国(環境省)でのレッドデータブック、レッドリストの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は、奈良県が絶滅危惧種、高知県が準絶滅危惧(NT) になっている[14]。
ギャラリー
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花序は茎先に1個でるか、各葉腋に多数でる。花冠は青紫色で長さ5-7mmとなり、この種内で一番小さい。
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萼は明らかな2唇形で、上唇は3裂し、裂片は狭三角状披針形となり先が細く伸びてやや反曲し、下唇は2浅裂し、上唇よりやや長くなり、裂片の先は鈍頭となる。果時の萼裂片の長さは4-5mmになる。
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葉は対生し、葉身は卵形で、長さ3-9cm、幅1.5-4cmになり、先端は鋭くとがり、縁には粗く鋭い鋸歯が生え、基部はくさび状になって葉柄につづく。葉の表面にまばらに毛が生える。
下位分類
タカクマヒキオコシ
タカクマヒキオコシ(高隅引起こし、高隅引起)Isodon shikokianus (Makino) H.Hara var. intermedius (Kudô) Murata (1955)[15] - 茎は四角形で下向きの毛があり、高さ50-80cmになる。葉身は細く、広披針形から長楕円状卵形で、長さ5-13cm、幅1.5-4cmになり、縁の鋸歯は低く、先がとがる。葉の両側にまばらに毛が生える。花期は8-10月。茎の先端に総状花序をつけ、花冠は青紫色で長さ7-12mmとなる。染色体数は2n=24。日本固有種。本州の福島県以南の太平洋側から、瀬戸内海沿岸、四国、九州に分布し、ブナ帯林などの落葉樹林の林下や林縁に生育する[6][7][8][16]。和名タカクマヒキオコシ(高隅引起)は、鹿児島県の高隈山に由来する[17]。変種名 intermedius は「中くらいの」「中間の」の意味[18]。
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花冠は青紫色で長さ7-12mmとなり、基本種のミヤマヒキオコシより大きく、次節のサンインヒキオコシよりは小さい。
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葉身は細く、広披針形から長楕円状卵形で、長さ5-13cm、幅1.5-4cmになり、縁の鋸歯は低く、先がとがる。葉の両側にまばらに毛が生える。
サンインヒキオコシ
サンインヒキオコシ(山陰引起)Isodon shikokianus (Makino) H.Hara var. occidentalis Murata (1955)[19] - 茎は四角形で下向きの毛があり、高さ40-80cmになる。葉身はより広く、長卵形で、長さ5-15cm、幅2-6cmになり、基本種のミヤマヒキオコシと比べ、縁の鋸歯は粗く少ない。葉の表面にまばらに毛が生え、中央の葉脈上に伏毛が密生する。花期は8-10月。花冠は青紫色でやや長く、長さ12-17mmとなり、同属のアキチョウジに似てくる。染色体数は2n=24。日本固有種。本州の富山県から山口県までの日本海側に分布し、ブナ帯林などの落葉樹林の林下や林縁に生育し、ときに群生する[6][7][8][16]。変種名 occidentalis は「西方の」「西部の」の意味[20]。
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花冠は青紫色でやや長く、長さ12-17mmとなり、この種内で一番大きい。
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葉身はより広く、長卵形で、長さ5-15cm、幅2-6cmになり、基本種のミヤマヒキオコシと比べ、縁の鋸歯は粗く少ない。
自然雑種
ヤマハッカ属には属内のほとんどの種間に自然雑種が報告されている[21]。この種に関連するものに次の雑種がある。
- クロバナサンインヒキオコシ Isodon × kurobanasaninhikiokoshi Murata (1993)[22] - サンインヒキオコシ×クロバナヒキオコシ
- タカクマアキチョウジ Isodon × takakuma-akichoji Murata (1993)[23] - アキチョウジ×サンインヒキオコシ
脚注
- ^ ミヤマヒキオコシ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ “Isodon excisus var. shikokianus (Makino) Kudô” (英語). www.gbif.org. 2025年11月12日閲覧。
- ^ “Plectranthus excisus var. shikokianus Makino” (英語). www.gbif.org. 2025年11月12日閲覧。
- ^ ミヤマヒキオコシ(シノニム) 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ ミヤマヒキオコシ(シノニム) 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f g h 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』pp.438-439
- ^ a b c d e f 『原色日本植物図鑑 草本編I(改訂版)』p.165
- ^ a b c d e f g h 米倉浩司 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』「シソ科」pp.140-143
- ^ 村田源「植物分類雑記3」『植物分類・地理 (Acta Phytotaxonomica et Geobotanica)』第16巻第2号、日本植物分類学会、1955年、44-47頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00003217456。
- ^ 門田裕一 (2011)「シソ科」『日本の固有植物』pp.122-126
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1513
- ^ Tomitaro Makino「日本植物報知 第十五」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第6巻第60号、東京植物学会、1892年、54頁、doi:10.15281/jplantres1887.6.45。
- ^ 牧野富太郎「日本植物新研究の発表(承前)」『植物研究雑誌 (The Journal of Japanese Botany)』第2巻第6号、牧野富太郎、1922年、24頁、doi:10.51033/jjapbot.2_6_220。
- ^ ミヤマヒキオコシ、日本のレッドデータ検索システム、2025年11月11日閲覧
- ^ タカクマヒキオコシ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b 『広島の山野草 秋編』pp.172-173
- ^ Takenoshin Nakai「Notulæ ad Plantas Japoniæ et Coreæ XXX」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第37巻第437号、東京植物学会、1923年、81頁、doi:10.15281/jplantres1887.37.437_en69。
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1497
- ^ サンインヒキオコシ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1505
- ^ 米倉浩司 (2017)『改訂新版 日本の野生植物 5』「シソ科」p.143
- ^ クロバナサンインヒキオコシ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ タカクマアキチョウジ 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
参考文献
- 北村四郎・村田源・堀勝著『原色日本植物図鑑 草本編I(改訂版)』、1983年、保育社
- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 小池周司写真、浜田展也・武内一恵監修解説『広島の山野草 秋編』、2011年、南々社
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- 村田源「植物分類雑記3」『植物分類・地理 (Acta Phytotaxonomica et Geobotanica)』第16巻第2号、日本植物分類学会、1955年、44-47頁、doi:10.18942/bunruichiri.KJ00003217456。
- Tomitaro Makino「日本植物報知 第十五」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第6巻第60号、東京植物学会、1892年、54頁、doi:10.15281/jplantres1887.6.45。
- 牧野富太郎「日本植物新研究の発表(承前)」『植物研究雑誌 (The Journal of Japanese Botany)』第2巻第6号、牧野富太郎、1922年、24頁、doi:10.51033/jjapbot.2_6_220。
- Takenoshin Nakai「Notulæ ad Plantas Japoniæ et Coreæ XXX」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第37巻第437号、東京植物学会、1923年、81頁、doi:10.15281/jplantres1887.37.437_en69。
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