ボラティリティ・アノマリー(Low-Volatility Anomaly)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/18 05:50 UTC 版)
「アノマリー (市場)」の記事における「ボラティリティ・アノマリー(Low-Volatility Anomaly)」の解説
伝統的なファイナンス理論の常識では、リスクが高い証券ほど期待リターンも高い、とされる。しかし、現実の株式市場では、事前に測定されたトータル・ボラティリティとその後のリターンとの間に負の相関が観察されるケースがある。ボラティリティをリスクの代理変数とみると、 ボラティリティが低い株式のリターンが高い、 という現象は、伝統的なファイナンス理論の常識と逆であり、リスクと期待リターンのトレードオフの関係に矛盾する。 この現象をボラティリティ・アノマリーと呼ぶ。 岩澤、内山らは(2013年)、東証一部上場全銘柄を対象として、1985年1月から2012年6月までの、ヒストリカル・ベータ値および銘柄固有ボラティリティを推計した。結果、年率平均の投資リターンは、低ベータが+4.8%に対し、高ベータは-1.4%となった。また、銘柄固有ボラティリティにおいては、それが低いポートフォリオは+4.8%であるのに対し,高いポートフォリオは-5.2%であった。よって、日本市場において、ボラティリティ・アノマリーが観察された事となる。また、ボラティリティ・アノマリーの背景を、異なる二つのメカニズムに分けて論じている。「ベータ・アノマリー」の背景には、ベンチマーク運用を行う機関投資家による高ベータ銘柄への選好があることを海外投資家の行動分析より示した。「銘柄固有ボラティリティ・アノマリー」の背景は、日本の株式市場における個人投資家の行動の分析によって検証した。その結果、とくに信用取引を行う個人投資家の中に、ギャンブル選好とでも呼ぶべき、少ない確率で発生する多額の利益に対するリスク愛好的な傾向が確認された。これらの投資家が,ファンダメンタル価値に比べ歪度が高い株式を割高に評価することにより、「歪度アノマリー」つまり歪度が高い株式における長期リターンの低迷をもたらすと考えられる。この「歪度アノマリー」によって「銘柄固有アノマリー」の半分程度を説明することができると述べた。
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