プロテアーゼの阻害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 08:12 UTC 版)
ヒトのセルピンのおおよそ3分の2は細胞外で働き、血中においてプロテアーゼの機能を阻害してプロテアーゼの活性を穏やかにする。例えば細胞外セルピンは血液凝固(アンチトロンビン)、炎症・免疫反応(アンチトリプシン、アンチキモトリプシン、C1阻害因子)、組織修復(PAI-1)におけるタンパク質分解カスケードを制御する。シグナルカスケードプロテアーゼを阻害することで、セルピンは発生にも影響を与える。ヒトのセルピンの表(下記)はヒトのセルピンの広範な役割や、セルピンの欠損に起因する疾患を示す。 細胞内で阻害効果をもつセルピンは多くの場合、複数の役割を持っているようであり、標的を同定するのは困難であった。さらに、ヒトのセルピンの多くはマウスのような実験動物において適切で機能的な相同分子が存在しない。それでも、細胞内セルピンの重要な役割は細胞内におけるプロテアーゼの不適切な活性を防止することかもしれない。例えば研究が進んでいるヒトの細胞内セルピンの一つがセルピンB9であり、これは細胞毒性を持つ顆粒プロテアーゼ、グランザイムBを阻害する。そうすることでセルピンB9は不慮のグランザイムB9の放出や、時期尚早もしくは望まれない細胞死の経路の活性化を防いでいる可能性がある。 ウイルスの中にはセルピンを用いて宿主のプロテアーゼの機能を妨害するものもある。牛痘ウイルスのセルピン、CrmA(cytokine response modifier A)は感染した宿主細胞が炎症反応やアポトーシスを起こすのを避けるために用いられる。CrmAはシステインプロテアーゼであるカスパーゼ1によるIL-1やIL-18の切断を阻害する事で宿主の炎症反応を抑制し、感染性を増大する。真核生物では植物性のある種のセルピンがメタカスパーゼとパパイン様システインプロテアーゼの両者を阻害する。
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