プラトン・アリストテレスの推論技術(弁証術)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/02 23:17 UTC 版)
「弁証法」の記事における「プラトン・アリストテレスの推論技術(弁証術)」の解説
更に、プラトン自身の考えが徐々に固まりつつ前面に出てくる初期末の『ゴルギアス』『メノン』から『国家』『パイドロス』等の中期以降の対話篇になると、「ディアレクティケー」(弁証術)は、「対話」「質疑応答」「問答」という元々の素朴な意味から発展し、対象の自然本性に沿って、自在に概念を綜合(総合)・分析(分割)していける、「緻密な推論の技術・能力」を意味するものとして洗練されてくる。(その一部は、後期の『ソピステス』『政治家』等に至り、分割法(ディアイレシス)の名で呼ばれる、より明確なものとして立ち現れてくる。) プラトンは「ディアレクティケー」(弁証術)と「レートリケー」(弁論術)を対比させながら、「言論(ロゴス)の技術(テクネー)」としての前者の優位性と後者の欠格を主張する。 プラトンのこの「緻密な推論技術」としての「ディアレクティケー」(弁証術)の用法は、弟子のアリストテレスにも受け継がれる。ただし、アリストテレスはこの概念を、「いかなる前提から出発するか」によって、 絶対的な真にして第一の前提から出発する「論証」(apodictic, 議論不要・恒真)的な推論(demonstration) (→厳密、学問的、形式的(形式論理学)、『分析論前書』『分析論後書』) 蓋然的な通念(endoxa)を前提として出発する「弁証」(dialectic)的な推論 (→社会的、実践的、『トピカ』) 不確かな前提から出発する「論争」(eristic)的な推論 (→詭弁、『詭弁論駁論』) 誤った前提から出発する「誤謬」推論(paralogism) 等に分割・分類し、再定義しており、「ディアレクティケー」(弁証術)の意味・役割は、「社会通念を適切に処理する手段」という狭い限定された領域に押し込まれることになった。 なお、アリストテレスの推論は、総じて「三段論法」(希: συλλογισμός, syllogism, シュロギスモス)として定型化されており、プラトンの頃よりも、統合(syl-)に向けてより形式化されている。そしてこの統合性が、後代のヘーゲルにおける弁証法とは異なって、無矛盾のうちに進められる。 アリストテレスのこれらについての著作は、後代に『オルガノン』(Organon)としてまとめられ、その技術は総じて「ロギケー」(希: λογική, logikē、羅: logica, ロギカ)と呼ばれるようになり、「論理学」(logic)の基礎となる。
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