フラムの双曲面
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/09 02:15 UTC 版)
「シュワルツシルト解」の記事における「フラムの双曲面」の解説
シュワルツシルト解の R > rs における空間曲率を左図のように図示することができる。シュワルツシルト解の一定時間・赤道面 (θ = π/2, t = const.) における断面を考える。この平面上を運動する粒子の位置は残りのシュワルツシルト座標 (r, φ) により表わすことができる。ここにもうひとつ仮想のユークリッド次元 w(時空の一部ではない)を追加したところを想像してみよう。そして、(r, φ) 平面を w 方向に次のように窪んだ曲面(フラムの双曲面)と置き換える。 w = 2 r s ( r − r s ) . {\displaystyle w=2{\sqrt {r_{\mathrm {s} }\left(r-r_{\mathrm {s} }\right)}}.} この曲面は、その上で測る距離がシュワルツシルト計量により定義するものと一致するという性質を持つ。なぜなら、上記の w の定義により、次の式が成り立つ。 d w 2 + d r 2 + r 2 d φ 2 = − c 2 d τ 2 = d r 2 1 − r s r + r 2 d φ 2 {\displaystyle \mathrm {d} w^{2}+\mathrm {d} r^{2}+r^{2}\mathrm {d} \varphi ^{2}=-c^{2}\mathrm {d} \tau ^{2}={\frac {\mathrm {d} r^{2}}{1-{\frac {r_{\mathrm {s} }}{r}}}}+r^{2}\mathrm {d} \varphi ^{2}} このため、フラムの双曲面はシュワルツシルト計量における空間の歪みを可視化するのに便利である。しかし、これを重力井戸の概念と混同してはならない。通常の粒子は(質量の有無に関らず)この双曲面上に世界線を辿ることができない。なぜなら、この双曲面上の線分は全て空間的だからである(これはある瞬間における断面であり、全ての動く粒子は無限大の速度を持つことになってしまう)。タキオンを持ち出したとしても、「ゴム膜」のアナロジーをナイーブに当てはめたときに予期されるような軌跡を辿るわけではない。一例をあげれば、この窪みが下向きでなく上向き描かれていたとしても、タキオンの軌跡は中心質量に向かって曲がるのであって離れるように曲がるのではない。 フラムの双曲面は次のように導出することができる。ユークリッド計量の下の距離を円柱座標系 (r, φ, w) を用いて書くと下のように書き下せる。 d s 2 = d w 2 + d r 2 + r 2 d ϕ 2 {\displaystyle \mathrm {d} s^{2}=\mathrm {d} w^{2}+\mathrm {d} r^{2}+r^{2}\mathrm {d} \phi ^{2}} この曲面を w = w(r) なる関数で表わすことにすると、ユークリッド計量はつぎのように書き下せる。 d s 2 = [ 1 + ( d w d r ) 2 ] d r 2 + r 2 d ϕ 2 {\displaystyle \mathrm {d} s^{2}=\left[1+\left({\frac {\mathrm {d} w}{\mathrm {d} r}}\right)^{2}\right]\mathrm {d} r^{2}+r^{2}\mathrm {d} \phi ^{2}} これをある固定時間の下 (t = const., dt = 0) での赤道面 (θ = π/2) におけるシュワルツシルト計量での距離 d s 2 = ( 1 − r s r ) − 1 d r 2 + r 2 d ϕ 2 {\displaystyle \mathrm {d} s^{2}=\left(1-{\frac {r_{s}}{r}}\right)^{-1}\mathrm {d} r^{2}+r^{2}\mathrm {d} \phi ^{2}} と比較すると、w(r) の積分表式は次のように書けることがわかる。 w ( r ) = ∫ d r r r s − 1 = 2 r s r r s − 1 + constant {\displaystyle w(r)=\int {\frac {\mathrm {d} r}{\sqrt {{\frac {r}{r_{\mathrm {s} }}}-1}}}=2r_{s}{\sqrt {{\frac {r}{r_{\mathrm {s} }}}-1}}+{\mbox{constant}}} この解がフラムの双曲面である。
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