フェミニズム的ユートピア
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「フィクションにおけるユートピアとディストピア」の記事における「フェミニズム的ユートピア」の解説
このサブジャンルとして、フェミニズム的ユートピア文学が存在する。これはフェミニストSFと部分的に重複するところがある。作家のサリー・ミラー・ギアハートによると、「フェミニズム的ユートピア小説は、(a) 現在から離れた時空で理想のものとして思い描かれる社会と現在を対置するもの、 (b) 現在の価値や状況に対する包括的批判を行うもの、 (c) 現代社会の病巣の主要要因を男性や男性中心的制度に見いだすもの、 (c) 生殖機能について、女性を単なる男性と同等の参画者ではなく唯一の仲裁者と扱うもの」に分かれる。 ユートピアにおいては、社会的構築物あるいは生得的な責務として描かれるジェンダーの影響が探求される。 メアリ・ジェントルのGolden Witchbreedやドリス・レッシングのThe Marriages Between Zones Three, Four and Fiveなどがこうした小説の例にあげられる。 エリザベト・マン・ボルゲーゼの『私自身のユートピア』 (1961) では、ジェンダーは存在するが、性別ではなく年齢に依存しており、ジェンダーのない子供が大人になって女性になり、そのうち最終的には男になる者もいる。 ジェンダーがひとつしか存在しない社会を描くユートピア文学もある。シャーロット・パーキンス・ギルマン(英語版)の『フェミニジア(英語版)』 (1915)は女性だけの社会を描いており、ジョアンナ・ラスのA Few Things I Know About Whileawayでは二分化されたジェンダーがなくなっている設定である。この種のフェミニズム的ユートピアについては影響力のある著作が1970年代に多数執筆された。最もよく研究されている例としては、ジョアンナ・ラスの『フィーメール・マン(英語版)』 やスージー・マッキー・チャーナスのThe Holdfast Chroniclesなどがある。こうした世界はレズビアンやフェミニストの作家により描かれることが多いが、その社会は必ずしも女性の同性愛を描いているわけではなく、全く性的要素がないものもある。ギルマンの『フェミニジア』は性のない社会を描いた著名な初期の例である。 シャーリーン・ボールはWomen's Studies Encyclopediaで、ジェンダーロールをスペキュレイティブ・フィクションにおける探求に用いるのはヨーロッパその他の地域よりもアメリカ合衆国で盛んだと指摘している。男性作家が描くユートピアにおいては、一般的に性別による分離よりは両性の平等が取り入れられている。 フェミニズム的なディストピア小説の例としては、神権政治による女性の権利の抑圧を描いたマーガレット・アトウッドの『侍女の物語』(The Handmaid's Tale、1985)がしばしば代表例としてあげられる。アトウッド本人は、本作を必ずしも「フェミニストディストピア」小説として書いたつもりはないことを述べているが、一方でこの小説はよく「極めて影響力の高いフェミニズム的テクスト」として論じられる。本作は2017年にHuluにより『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』としてドラマ化された。
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