フィボナッチの分数表記法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/11 02:55 UTC 版)
「算盤の書」の記事における「フィボナッチの分数表記法」の解説
「算術の書」を読むのにフィボナッチの分数表記法を理解することは役立つ。その表記法とは当時まで一般的に用いられていたエジプト式分数と、今日も使われている形式の分数の中間のものである。 帯分数の表記において、現在 2 1 3 {\displaystyle \scriptstyle 2\ {\frac {1}{3}}} (=7/3)と書くところを、フィボナッチは 1 3 2 {\displaystyle \scriptstyle {\frac {1}{3}}\ 2} と顕した。 フィボナッチは合成された分数、つまり複数の分子と分母が同じ括線(分数の中央の横棒)を共有している形式を用いた。これを通常の形式にするには、分子はそのままで、各分母にそれよりも右にある分母を掛けた分数の和とすればよい。例えば b a d c = a c + b c d {\displaystyle \scriptstyle {\frac {b\ a}{d\ c}}={\frac {a}{c}}+{\frac {b}{cd}}} 、 c b a f e d = a d + b d e + c d e f {\displaystyle \scriptstyle {\frac {c\ b\ a}{f\ e\ d}}={\frac {a}{d}}+{\frac {b}{de}}+{\frac {c}{def}}} である(右から左に読んでいることに注意)。これは異なる基数の数の和として表され、伝統的な重さ、長さ、通貨の単位を扱うのに便利である。具体的な例として、長さの単位:フィート、ヤード、インチに関して1ヤード=3フィート、1フィート=12インチが成り立つので、5ヤードと2フィートと 7 3 4 {\displaystyle \scriptstyle 7\ {\frac {3}{4}}} インチの和は 3 7 2 4 12 3 5 {\displaystyle \scriptstyle {\frac {3\ 7\ 2}{4\ 12\ 3}}\ 5} ヤードと表される。しかし、伝統的な単位に対する典型的な分数表記法は、異なる基数に基づくのと同様、分母を明記しない。フィボナッチの表記法において、明記された分母は異なる基数の単位を多様な問題に自由に用いられる。シグラーはフィボナッチがすべての分母が10である合成された分数を用いて、小数を分数の形で表す方法を定めていることも指摘している。 フィボナッチは時として複数の分数を隣り合わせて並べ、各分数の和として表現していた。例えば、 1 4 1 3 2 {\displaystyle \scriptstyle {\frac {1}{4}}{\frac {1}{3}}\ 2} は 1 4 + 1 3 + 2 {\displaystyle \scriptstyle {\frac {1}{4}}+{\frac {1}{3}}+2} (=31/12)を表す。この形式は2.の合成された分数の形式とは、各分数間に切れ目があることから区別できる。もし全ての分子が1で全ての分母が互いに異なるものであれば、結果としてエジプト式の表記と同じものになる。この形式は時々2.の形式と併用されることもある。つまり b a d c f e h g {\displaystyle \scriptstyle {\frac {b\ a}{d\ c}}{\frac {f\ e}{h\ g}}} は ( a c + b c d ) + ( e g + f g h ) {\displaystyle \scriptstyle ({\frac {a}{c}}+{\frac {b}{cd}})+({\frac {e}{g}}+{\frac {f}{gh}})} を意味する。 この形式の複雑性は数を多くの異なる方法で書き表すことを可能にし、フィボナッチはある表記法から別のものへと換算するいくつかの方法を説明している。特に、第2章第7節は通常の分数をエジプト式分数に換算する方法の表を含む。
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