バスティアによる主張
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 07:16 UTC 版)
「割れ窓の寓話」の記事における「バスティアによる主張」の解説
バスティアそしてオーストリア学派の理論家達は、割れ窓の寓話を別の形に応用している。窓を割った子供が実はガラス屋に雇われていて、窓を1枚割るごとに1フラン受け取っていたと仮定してみよう。突如として、この行為は窃盗と見做されるようになるだろう。ガラス屋は、窓を割ることで、自身のサービスの利用を人々に強いている形であるが、しかし、見物人達が目にする事に変化は無い。ガラス屋は、パン屋や仕立て屋などの犠牲の上に、商売上の利益を得るのである。 ガラス屋が子供を雇って窓を割るのと事実上同等の行為が、社会によって是認されていると、バスティアは主張する。 ここにおいて、私達は「社会は、無益に物品が破壊されると、その価値を損する」という予想外の結論に至った。そして、私達は、保護主義者達の髪を逆立てるであろう公理に賛同しなければならない。壊す事、駄目する事、消耗する事は、国の労働の振興に繋がらない。あるいは、もっと簡潔に言えば、「破壊は利得ではない」。 モニターインダストリアル誌は何と言うだろうか。パリを焼き払う事で、多くの家屋を再建する必要が生じて、それによって産業はどれぐらいの利益を得るかを、格別の精密さをもって計算したM. F. Chamansの弟子達は何と言うだろうか。 バスティアは生産を論じているのではなく、富の貯蔵量を論じているのである。言い換えれば、バスティアは、単純に、窓を割る事の短期的な効果を見ているのではなく、長期的な効果を見ている。さらに言えば、バスティアは、窓を割る事が一つのグループにどう影響するかという事だけではなく、すべてのグループあるいは社会全体にどう影響するか、という事を考慮に入れている。オーストリア学派の理論家達は、割れ窓の誤謬を引き合いに出し、大衆的思考によく見られる特徴であるとする。その一例としてCash for Clunkers などが挙げられる。20世紀のアメリカ人の経済学者ヘンリー・ハズリットは、著書「世界一シンプルな経済学」(Economics in One Lesson) の中で、この話題に一章を割いている。
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