ハヤザキヒョウタンボク
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/10 15:26 UTC 版)
ハヤザキヒョウタンボク | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Lonicera praeflorens Batalin var. japonica H.Hara (1982)[1] | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
ハヤザキヒョウタンボク(早咲き瓢箪木)[2] |
ハヤザキヒョウタンボク(早咲き瓢箪木、学名: Lonicera praeflorens var. japonica)は、スイカズラ科スイカズラ属の落葉低木[2][3][4]。別名、カイヒョウタンボク、ヒロハヒョウタンボク[5]。L. praeflorens var. praeflorens を基本変種とする変種で、基本変種は、朝鮮半島、中国大陸北部、ウスリーに分布する[4]。
直立する高さ1-2mの低木で、枝は中実でほぼ無毛[2]。葉の展開前に白色の花が開くのが特徴[6]。
特徴
高さは1-2mになる。幹の樹皮は灰褐色になり、縦に裂けて落ちる。若い枝は褐色を帯び、古くなると灰色になり、円く、無毛で、中実になる。葉は対生し、葉身は長さ2.5-6cm、幅1.5-4cmの卵形から卵円形で、先端は急に短くとがり、基部は円形または広いくさび形になる。葉の縁は全縁で、縁に開出する軟毛が生える。葉の両面に軟毛が密生し、表面にしわがあり、裏面の葉脈上に軟毛が多い。葉柄は長さ2-5mmになり、軟毛が生える[2][3][4]。
花期は4-5月。花は葉の展開に先立って咲き、長さ1-5mmになる短い花柄の先に2個の花を下向きにつける。花柄は無毛で、花時は短いが、果時には長さ5-22mmに伸びる。子房の基部に2個の大きな苞があり、卵形から卵状披針形で、長さ3-9mm、幅2-4mm、縁に短毛が生え、果時まで残る。小苞は無い。子房は下位で無毛、離生し、3室ある。萼片はふぞろいに中裂し、裂片の長さは0.7mm、縁に腺毛がまばらに生える。花冠は漏斗状で5深裂し、長さ12mm、白色ときに淡紫色を帯びる。花冠筒部は長さ4-5mm、花冠裂片は卵状長楕円形で、長さ5-8mm、幅2.5-3.5mmになる。雄蕊は5個あり、花冠から長く超出する。花糸は無毛で花冠筒部まで合生する。雌蕊は1個、花柱は花冠から長く超出する。果実は径6-10mmになる球状の液果で、2個ずつ並ぶが合着はせず、5-6月に赤く熟す。種子は長さ3-3.5mmになる。染色体数2n=18[2][3][4]。
分布と生育環境
変種としては日本固有種[6]。福島県、群馬県、埼玉県、山梨県、長野県[2]に局地的に分布し[6]、群馬県と山梨県に接する長野県側に多い[2]。標高800-2200mの山地に稀に見られ、石灰岩地にも生育する[4]。
基本変種は、朝鮮半島、中国大陸北部、ウスリーに分布し、若い枝と花柄に毛と腺毛が生える[4]。
名前の由来
和名ハヤザキヒョウタンボクは、「早咲き瓢箪木」の意で[2]、中井猛之進(1918)による[7][8]。
種小名(種形容語)praeflorens は、本変種をウスリー、中国大陸東北部、朝鮮半島産の基本種から分離した原寛 (1982) によると、「この和名(ハヤザキヒョウタンボク)は種名の praeflorens を訳したものともとれる」としている[8]。変種名 japonica は「日本の」の意味[9]。
種の保全状況評価
国(環境省)でのレッドデータブック、レッドリストの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は、福島県-絶滅危惧IA類(CR)、茨城県-絶滅危惧IB類、群馬県-絶滅危惧IA類(CR)、埼玉県-絶滅危惧IA類(CR)、東京都-絶滅危惧IA類(CR)、山梨県-絶滅危惧IB類(EN)となっている[10]。
長野県小諸市では、小諸市動植物の保護に関する条例(令和5年条例第17号)に基づく保護動植物に指定されている[11]。
ギャラリー
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花は葉の展開に先立って咲き、短い花柄の先に2個の花を下向きにつける。
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2個の大きな苞があり、卵形から卵状披針形で、縁に短毛が生え、果時まで残る。花冠は漏斗状で5深裂し、白色ときに淡紫色を帯びる。雄蕊と雌蕊は花冠を超出する。
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葉の表面。葉は対生し、葉身は卵形から卵円形で、先端は急に短くとがり、基部は円形または広いくさび形になる。
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葉の裏面。軟毛が密生し、表面にしわがあり、裏面の葉脈上に軟毛が多い。葉柄に軟毛が生える。
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果実は径6-10mmになる球状の液果で、2個ずつ並ぶが合着はせず、5-6月に赤く熟す。6月上旬。
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生育環境。この場所は石灰岩地。
脚注
- ^ ハヤザキヒョウタンボク 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e f g h 城川四郎 (2001)「スイカズラ科」『山溪ハンディ図鑑5 樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物』p.413
- ^ a b c 『原色日本植物図鑑 木本編I(改訂版)』p.11
- ^ a b c d e f 五百川裕 (2017)「スイカズラ科」『改訂新版 日本の野生植物 5』p.421
- ^ ハヤザキヒョウタンボク(広義) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c 奥山雄大 (2011)「スイカズラ属」『日本の固有植物』pp.133-134
- ^ 中井猛之進「雑録〇日本植物帯ニ加フベキ三種」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第32巻第377号、東京植物学会、1918年、144-146頁、doi:10.15281/jplantres1887.32.377_135。
- ^ a b 原寛「東亜植物註解 (10)」『植物研究雑誌 (The Journal of Japanese Botany)』第57巻第6号、津村研究所、1982年、180-181頁、doi:10.51033/jjapbot.57_6_7361。
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1498
- ^ ハヤザキヒョウタンボク、日本のレッドデータ検索システム、2025年6月10日閲覧
- ^ 小諸市動植物の保護に関する条例に基づく保護動植物の指定に関するお知らせ
参考文献
- 北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑 木本編I(改訂版)』、1984年、保育社
- 茂木透写真、高橋秀男・勝山輝男監修『山溪ハンディ図鑑5 樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物』、2008年改訂、山と溪谷社
- 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- 日本のレッドデータ検索システム
- 中井猛之進「雑録〇日本植物帯ニ加フベキ三種」『植物学雑誌 (The Botanical Magazine)』第32巻第377号、東京植物学会、1918年、144-146頁、doi:10.15281/jplantres1887.32.377_135。
- 原寛「東亜植物註解 (10)」『植物研究雑誌 (The Journal of Japanese Botany)』第57巻第6号、津村研究所、1982年、180-181頁、doi:10.51033/jjapbot.57_6_7361。
- 小諸市動植物の保護に関する条例に基づく保護動植物の指定に関するお知らせ、長野県小諸市
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