ハシボソガラスとの関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 16:19 UTC 版)
「ズキンガラス」の記事における「ハシボソガラスとの関係」の解説
胴体部分の羽毛が灰色であるズキンガラスと全身黒色のハシボソガラスはリンネによって別種と記載されて以降、その分類については議論がなされてきた。西ヨーロッパと東アジアにハシボソガラス、その間にズキンガラスが生息するという地理的な分布は、これらの共通祖先が更新世における氷河期に3ヶ所の生息域にそれぞれ隔離され、生殖隔離とズキンガラスにおける特徴的な表現型の変化が進んだ後、完新世期において生息域が拡大した結果であると考えられており、生息域拡大に伴う二次的接触によるとされる自然雑種の存在は古典的な教科書に掲載されている程度によく知られている。交雑個体の色はハシボソガラスよりも灰色で、ズキンガラスよりも黒く、ちょうど両種の中間の形態を示し、胸にはヘリンボーン状の模様が現れ、繁殖能力も有する。しかし、交雑帯においても交雑個体は時々にしか観察されない。この隔離の不完全さと遺伝的な同一性の高さから、過去にはハシボソガラスの亜種と考えられることもあった。しかし、非任意交配を示すことや遺伝子発現のパターンの違いから、別種であるという主張もなされてきた。 Poelstraらが2014年にサイエンス誌に発表した研究では、これらの2種について、ヨーロッパ地域の交雑帯から完全に隔離されている地域までの幅広い範囲に生息する集団に由来する個体の全ゲノム解析を行った。その結果、この2種間では総じてゲノム配列の違いはごく僅かであり、例えば、ドイツのハシボソガラスはスペインのハシボソガラスよりも明らかにズキンガラスに近いゲノム配列を持っていた。一方で、遺伝子発現解析によって発現が異なる遺伝子は羽嚢で発現する色素関連遺伝子に集中していることが確認され、これら2種のゲノム中には遺伝子流動が強く抑制されている箇所が存在し、そのうち最も抑制が顕著な18番染色体上の領域には色素および体色に関連する遺伝子と関連する1塩基多型の殆どが存在していた。このことは、羽毛の色のパターンという外見的特徴によって接合前隔離が起こっていることを強く示唆しており、自然選択ではなく、同類交配と性選択によって形態および遺伝的差異が引き起こされていると考えられる。 一方で、シベリア地域ではEastern carrion crow(ハシボソガラスの亜種)と交雑しており、その交雑集団においては18番染色体ではなく、21番染色体上に最も遺伝子流動が抑制されている領域が検出され、色素関連遺伝子に関してもヨーロッパ地域と共通して遺伝子流動が抑制されている遺伝子が限られていたことから、地域ごとに独立した選択圧が生じていることが示唆された。
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