ノルブの光輪
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 02:18 UTC 版)
砂漠の村でスークは奇妙な一向に出会う。盗癖のある物識り顔の学者(ヤートン)・ドルジ、醜い老婆ドン・ドゥパ、そしてその孫、少年チリの三人だ。三人はグルームを信仰するバジャ教徒の聖地スルカン・シャンへ向かう途中だった。閏年その孤峰の頂きでは不思議な祭礼が行われるというのだ。かねてから知的動物グルームに関心を持ち、運命論的なバジャ教の教義にこだわりを感じていたスークは一行に混って巡礼者の一人になる。行く先々でチリは秘力を見せる。巡礼や荒野のならず者達がいつしかその周りに集まり、集団はやがて一種の教団を形成する。邪心を抱くドン・ドゥパ。そして学者・ドルジ。しかし当のチリは全くそうした事々には頓着しなかった。スークに親情を寄せるチリ。それは青い蕾のような異性への恋幕。チリは少女だったのだ。スークはいとおしさをこめてはかなげなチリを護った。その年の祭礼は千年来の一大奇跡に当たるとされていた。原理主義的なバジャの急進派はそれを万物の死滅と再生の時と見ていた。いずれにせよ一大奇跡は伝説の妖星「破壊霊の星」(カナーグ・メーノーグ)の出現と共に起る。そして__。果して宙天にその星は現われた。刻々と近づき光を増す妖星。その輝きの下で群れ集って来たグルームは次々と死んで背中から奇怪な茸を発生させるのだった。やがて聖山は巨大な乱気流に巻かれた。ならず物達の時ならぬ策謀の為に頂を離れていたスークと学者は危うく難を免れるが、幾万もの巡礼者達はこの天変によって聖山にかき消えてしまう。グルームの茸はやがて燐光を発し、はじけて盛大に胞子を飛ばす。それは彼らの長大な生の輪廻の営みなのだった。聖少女チリは見えない目でその神秘のセレモニーを見、祝福の笑みを浮かべ、そして再び巡り来た闇の静寂の中で消え入るように死ぬ。
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