トランス・ダンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/17 16:16 UTC 版)
サン人のシャーマニズムは、精神世界に入るために、守護霊や守護獣を狩ることを通して、トランス状態に入る。エランドは守護獣としてよく用いられ、その脂は通過儀礼などの儀式で象徴的に用いられる。他にも、キリンやクーズー、ハーテビーストも同様の役割を果たす。 サン人にとっての重要な儀式は、トランス状態でのダンスである。このトランス・ダンスでは、人々が円形になって、女性が手拍子をしたり、歌を歌ったりして、男性がリズムカルに踊る。サン人は幻覚剤を常習しているわけではないが、見習いのシャーマンはトランス状態に入るために、踊りの最初に幻覚剤を用いることがある。 心理学者が幻覚剤と神経心理学における変性意識状態について調査した結果、内視現象がリズミカルな踊りや音楽、感覚遮断、過呼吸、長期的に続く極度の集中状態、偏頭痛を起こしうることが分かった。岩絵はトランス状態の3段階で、心理学的に説明される。第1段階で、変性意識状態になる。このとき、ジグザグや山形、点々、斑点、格子、渦巻き、U字形などの幾何学的図形が見える(内視現象)。これらの図形はアフリカ南部の岩絵によく見られる。 第2段階では、内視現象に意味づけしようとする。なじみ深いものを作成するまで、内視現象で「見た」形を作り続ける。この第2段階を経験しているシャーマンは、ハニカム構造やなじみ深い形を想像して、自然界を内視現象に取り込む。 第3段階ではイメージの激変が起こる。最も重要な変化はシャーマンが経験の中に入ることである。実験では、被験者がねじれたトンネルを滑り落ち、洞窟や地面の穴に入る経験をするのが見られた。第3段階が始まると、現実を把握できなくなり、怪物や動物の幻覚が見え、その幻覚には激しい感情が伴う。岩絵にあるような獣人の正体は、このような感情が高まったものであるとして説明できる。 BBCは、2009年1月16日、ドキュメンタリー「Around the World in 80 Faiths」で、ボツワナのハンツィに住むサン人が行うトランス・ダンスを取り上げた。
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