スンナ派における大イマーム論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/28 15:57 UTC 版)
「イマーム」の記事における「スンナ派における大イマーム論」の解説
イスラム教の多数派であるスンナ派においてはイマームには礼拝など宗教的な事柄に関する指導者という以上の意味はもともと存在しない。しかし、アッバース朝期のイスラム法学上の議論において、おそらくはシーア派の影響を受けて、ウンマの指導者であるカリフは、ウンマの指導者たる預言者の代理人(ハリーファ。カリフの語源)としての資格(ヒラーファ)と、信徒たちの宗教的行為の模範となり、指導するべき者(イマーム)としての資格(イマーマ)を兼ね備えた者がなるべきであるとする理想論が唱えられるに至った。このような意味でのカリフ制におけるイマーム位は、モスクにいる一般のイマームと区別して、イマームの中のイマーム、すなわち大イマームと呼ばれ、カリフとはハリーファ・ラスールッラー(「神の使徒の代理人」)にしてアミール・アル=ムウミニーン(「信徒たちの長」)であると同時に、大イマームであると観念される。 スンナ派における大イマームとしてのカリフは、シーア派のイマームと異なり、クルアーンやイスラム法の解釈権は持たない。イスラム法はイスラム法学者などのウラマーたちの合意によって形成されるものであり、大イマームはイスラム法を忠実に執行し、イスラム法の理想通りにウンマを導いていく義務がある。大イマームはクライシュ族の出身の男子であり、心身が健康でありさえすれば誰でもなることができ、共同体からの互選により選出される以外にも、前任者が自身の後任を自己意思で任命することによる選出法が許容されており、アッバース家による事実上の世襲は完全に合法とされた。しかし、大イマームがイスラム法によらない共同体の運営(政治)を行ったときは、ムフティーなどの権威あるウラマーの意見や合意に基づき大イマームの資格を剥奪されうるとし、この理論によりカリフの廃位も可能とされた。
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