ストーリーの定型
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/21 15:32 UTC 版)
多羅尾伴内シリーズは、それぞれ1作品で話が完結している。初期の大映時代にはストーリーにも試行錯誤の変化が見られるが、東映時代の後期になるにつれて定型パターン化してゆく。千恵蔵版の定型ストーリーは以下のようなものである。 多羅尾伴内は「多羅尾探偵事務所」を開設する飄々ととぼけた感じで風采の上がらない私立探偵である。いつもユーモラスにひょこひょこと歩く。怪事件が発生すると警察を訪れて情報交換をしながら調査を開始する。変装の趣味があるのか、多羅尾伴内は調査に当たって次から次へとちがう謎の人物に変装してゆく。彼が変装するのは、多羅尾自身や「片目の運転手」「せむしの男」のような冴えない人物か、「手品好きのキザな紳士」「奇術師」「インドの魔術師」あるいは「中国の大富豪」のような風変わりな人物が多い。映画の観客から見れば同一人物であることは一目瞭然なのだが、なぜか他の登場人物たちには少しも気づかれる様子がない。多羅尾および彼が変装した5人の人物の調査・工作によって事件はかき回され、解決するどころかかえって事態は複雑化して、それに巻き込まれてしまった人物が死にいたることすらしばしばある。こうして伴内は、事件に関連する人物群を網羅的に掌握し、彼らが大団円の舞台へ集まるように誘導工作をする。 伴内による工作の効果によって、犯罪一味や被害者たちが大団円の舞台へと集まる。伴内が化けた謎の男を前にして、犯罪一味のボスが問う。 ボス 「貴様は誰だ!?」 謎の男 「七つの顔の男じゃよ。ある時は競馬師、ある時は私立探偵(多羅尾伴内)、ある時は画家、またある時は片目の運転手、ある時はインドの魔術師、またある時は老警官。しかしてその実体は……正義と真実の使徒(=使者)、藤村大造だ!」(使徒を人と聞き違える人多し)(このやりとりは、もちろん変装によって変わる。言葉づかいも多少変化する) こういうや否や、謎の男は自身の扮装を剥ぎ取って真の姿・藤村大造となり、事件の真相を解説した後で、二挺拳銃で犯罪一味と銃撃戦になる。多羅尾(藤村)あるいは被害者などから通報を受けた警察がパトカーで駆けつけるころには、藤村大造が勝利を収めている。 ラストシーン。犯罪一味が警察に捕縛されている間に、藤村は悠々と(いつのまに準備したのか)オープンカーで去ってゆく。救出された被害者が藤村に礼を言おうと追いかけると、車はすでに遠ざかり、後には藤村が詩を書き残した紙片が木や塀に貼り付けられていて、被害者は感銘を受けて物語が終わる。
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