スウェーデンにおける貧困家庭対策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 23:58 UTC 版)
「貧困の悪循環」の記事における「スウェーデンにおける貧困家庭対策」の解説
スウェーデンでは社会保険は国の権限によって実施されており、スウェーデンに居住していれば給付される保険(一種の手当に近い)と、労働市場に参加し保険料を支払っていれば給付される保険の2 段階に組み立てられ、従前所得に対して高い割合の給付が保障されている。これに対して、社会扶助は、管理・運営がコミューン(基礎自治体)に委ねられている。運営面でコミューン間にかなり相違があり、給付水準さえも異なるケースがある。給付の際には、最低生活費の給付とともに、ソーシャルワークによって自立支援が行われているという。その社会扶助の受給資格がきわめて厳しく、所有物を基本的に売却しなければならず、家や土地はもちろん、自治体によっては車・コンピュータも売却対象となり、また少しでも労働能力があれば就労プログラムへの参加が強いられる。90年代の経済危機により失業者が増加し社会保障受給者が増え、社会扶助にかかるコストの増加、受給者数の増加、さらには受給年数の長期化という3 つの要因によって「スウェーデンモデルの崩壊」が叫ばれるほどであった。その結果、社会省が1999年から2004年までに社会扶助受給者数を半減する目標を設し、同時に社会扶助受給者の増加を分析したところ、若年と母子世帯の社会扶助受給者にはきわめて多様なケースが存在しているという。非常に多いのが、社会保険でもカバーされないような軽度の知的障害者、社会活動に不可欠なコミュニケーション能力が欠如している者(軽度の学習障害の場合、大学卒業も可能だがその後の就労の機会に恵まれない事例が多い)、それからDV や児童虐待を受けてきた者、あるいは薬物中毒者・アルコール中毒者である。こうした人びとは、医師から雇用能力があると診断されながら、実際に就労支援を行っても有効に機能しないという事態が起きているという。長期受給者の増加によって、社会扶助受給世帯の子どもも社会扶助受給者に陥るような、貧困の世代間継承の事例も存在することが確認されている。また、2000年にエンショピング市では利用者がソーシャルワーカーを刺殺する事件が発生し、福祉事務所にはソーシャルワーカーを保護するための敷居が設けられ、かなり排除的な事務運営になっているという。
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