コンプトンプロファイル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/13 17:29 UTC 版)
「コンプトン効果」の記事における「コンプトンプロファイル」の解説
コンプトンがコンプトン散乱を見つけたデータには、実は実験装置の精度以上に波長の広がりが観察されていた。これは、実際には物質中の電子は静止しておらず、ドップラー効果により、コンプトン散乱には電子の運動量が反映されることによる。1929年には金属 Be のコンプトン散乱の測定から,物質中の電子の運動量分布はフェルミ・ディラック統計に従うことが示されている。インパルス近似が成り立つ条件下で,コンプトン散乱 X 線のエネルギー分布から始状態の電子運動量分布が得られる。コンプトン散乱X線のエネルギースペクトルから求めた物質中の電子運動量分布を、コンプトンプロファイルとよぶ。コンプトンプロファイルは電子運動量密度の一次元投影像であり、電子運動量密度は運動量空間の波動関数の絶対値の2乗、すなわち運動量空間の電子密度である。電子系の基底状態の運動量密度分布をn(p)とすると、z軸に投影したコンプトンプロファイルJ(pz)は J ( p z ) = ∫ ∫ n ( p ) d p x d p y {\displaystyle J(p_{z})=\int \int n(p)dp_{x}dp_{y}} である。コンプトン散乱における始状態は基底状態と考えてよい。また、理論計算により、基底状態の電子状態、波動関数、電子の運動量密度n(p)を求めることができる。従って、測定されたコンプトンプロファイルを理論計算と比較検討することで、基底状態の電子状態を考察することできる。兵庫県にある大型放射光施設SPring-8などでコンプトン散乱を用いた物性実験が行われている。高エネルギーX線を利用するため、物質内部の観察のほか、高圧、ガス雰囲気、電磁場中など様々な環境での測定が可能である。
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