コンプトンの実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/13 17:29 UTC 版)
コンプトンはX線の散乱の際に、波長が変化することを調べるために次のような実験を行った。 初めに、モリブデンの対陰極を持つX線管からX線を生成し、次に生成されたX線を石墨片へ入射させた。そして散乱された輻射を、いくつかのスリットに通した後、分光器の役割を果たす単結晶として方解石へ入射させ、ブラッグ反射の原理を利用して、分光および波長の測定を行なった。最後に、検出器である電離箱を用いて各波長の強度を測定し、続けて散乱角を変化させて45°と90°、135°について測定した。さらに石墨片以外の物質(銅や銀など)を散乱体に用いて、それぞれ同一角における各波長の強度の違いを調べた。 実験の結果、以下の事実が明らかになった。 波長のずれの大きさは散乱角に依存し、散乱体の材質によらない。 散乱体の原子番号が増すと、波長のずれなかったX線の強度は増大し、波長のずれたX線の強度は減少する。 この原因は、クーロン力により説明がつく。電荷が大きい原子核(原子番号が大きい)との距離が近い電子は、クーロン力により原子核から大きな束縛を受ける。その結果、この電子は原子核と一体になって、衝突に参加する。従って運動量の保存則から光子は、自身のエネルギー及び運動量を伝達できない。よって波長の変化が起きず、コンプトン効果は生じない。
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