コンピュータ創薬
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/14 22:53 UTC 版)
「COVID-19に対する薬剤研究」の記事における「コンピュータ創薬」の解説
タンパク質間相互作用 (PPI) に関する原理的な知見として、相互作用を生じる二つのタンパク質などは、それらの一部同士が空間的に合致する(嵌まる)形であることが多いことが分かっている。この原理を利用して、SARS-CoV-2 の立体構造に対して、既知のあらゆるタンパク質の立体構造を様々に当ててみてどこか嵌まらないかとしらみつぶしに調べることで、抗SARS-CoV-2薬の候補となるタンパク質群を発見するアプローチが可能である。しかしこれには膨大な計算量が必要となる。そこで、1台のコンピュータだけでなく多数のコンピュータで分散して計算することが発見の近道となる。世界中から無償ボランティアを募集してコンピュータを自動的に借りながら発見作業を進めるというオープンなプロジェクトが、いくつか開始している。 こうしたプロジェクトには世界の誰でも参加して自分のパソコンで薬剤発見に貢献できる。インストールしたプログラムアプリがデータを自動的にダウンロードして解析してサーバに次々報告する。参加者はインストールと必要に応じて設定を行えばよい。その代表的なものとして、2020年2月末、セントルイス・ワシントン大学に拠点を持つ分散コンピューティングプロジェクトのFolding@homeでは、本ウイルスへの取り組みの基盤を提供し、個人・企業が所有するパソコンの余剰パワーの提供を募集した。 グレッグ・ボウマン博士は「近い将来に最も期待がかかるのは、いずれかの部位に結合できる既存の薬剤を見つけられるかどうかだ」と述べた。NVIDIAやGitHubなどIT大手、redditのパソコン・ゲーム愛好家グループなど2週間で40万人以上が専用アプリをダウンロードした。3月25日、Folding@homeの演算能力は約1.5エクサFLOPSに達した。TOP500の上位100スーパーコンピュータの合算を上回る能力を獲得し、これまでの数千倍長いタンパク質を対象とするシミュレーションが可能となっている。
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