キングの指揮哲学
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「アーネスト・キング」の記事における「キングの指揮哲学」の解説
キングは自伝で大規模戦争における部下のイニシアティブの必要性を繰り返し強調しているが、CINCLANT時代にその指揮哲学を明示した。1941年1月21日のCINCLANT命令第53号「司令部の訓練 命令と指示における詳細の過剰」では、将官や群指揮官が部下に「何を」だけでなく「いかに」すべきかも命令・指示することが標準的習慣になっているが、命令で絶対必要な要素は「部下のイニシアティブ」であるとし、我々は迫り来る戦争の準備をしており、部下の任務について「何を」「いつ」「どこで」「なぜ」以上に、「いかに」まで指示する時間も機会もないとした。そして部下の指揮官が「有能」でないと判明するまでは「有能」であるという前提で「何をすべきか」を命令し、「いかにすべきか」は部下が「自分で先見の明を働かせ、考え、判断し、決断し、行動する」よう訓練して、「彼らの"面倒を見る"ことをやめるように」と命令した。さらにキングは4月22日のCINCLANT命令第328号「司令部の訓練 イニシアティブの正しい使用」で第53号の原則を繰り返すとともに「分業」と「分権化」を説き、司令部の効果的訓練にはハードワークが要求されるとした。キングも元来は詳細な命令を出すタイプだったが、COMPATFOR、CINCLANTとして大西洋全域でドイツ海軍との「宣戦布告なき戦い」を任されると、それまでのように全てを直接指揮することはできなくなり、スタイル変更を迫られたのである。 戦史研究に熱心なキングは大尉時代にナポレオン戦役を研究し、「ナポレオン式システムの大きな弱点は、ナポレオンの細かな監督を必要としたことである。……ナポレオン戦役の研究から学ぶべき最大の教訓は、反対のことをしなければならないこと、部下たちに独立した行動の訓練をさせることである。……ドイツはナポレオン戦役の研究から、部下たちのイニシアティブの原則を発展させ、彼らの全軍事ドクトリンはそれに基づいていた」と結論していた。さらにキングはCINCLANT命令を出した理由について「最高司令官は、不必要な細事から自由になることによってのみ、彼だけができる事を達する暇を得られる。……司令長官は、彼だけが責任を負う将来の部隊展開の立案と全体的な決断に集中する暇がなくてはならない」と説明している。
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