ガリウム添加の効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/06/28 12:59 UTC 版)
「プルトニウムガリウム合金」の記事における「ガリウム添加の効果」の解説
α相プルトニウムは原子同士の結合長が異なるため結晶構造の対称性が低く、金属というよりもセラミックのように振る舞う。ガリウムを添加することで結合長が均等に近づくため、δ相の安定性が高まる。これは、α相の原子間結合には5f軌道の電子が関与しているが、温度を上昇させたり、結晶格子中に5f軌道の電子と結合する適切な原子を導入することで関与を弱めることができるためである。さらに、このことで溶融状態の方が固体より高密度となる(すなわち固化の際に膨張する)ため、鋳造の際に気泡や鬆(す)が入りにくくなる。 一方、ガリウムはプルトニウムと分離する傾向があり、ガリウムが多い中心部と少ない周辺部に分かれる「コアリング (coring)」という現象が起こる。結晶格子を安定化させてコアリングを防ぐため、δ相–ε相間の転移温度よりわずかに低い温度で焼なましを行うことで、ガリウムを拡散させ均質な構造とすることができる。均質化に要する時間は合金の結晶粒径が大きいほど長くなり、温度を高くするほど短くなる。こうして安定化させたPu-Ga合金の結晶構造は、面心立方格子においてプルトニウム原子がガリウム原子で置き換えられている以外はδ相のプルトニウムとまったく同じになっている。 また、ガリウムが含まれていることは、そのプルトニウムが核兵器工場や廃棄核兵器由来のものであることを示している。プルトニウムの同位体組成を調べたり、試料と突き合わせたりすることによって、製造方法や生産炉の形式、照射履歴などを知ることができ、核物質の密輸を捜査する上で重要な証拠になる。
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