エンリルとニンリル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/26 18:24 UTC 版)
この物語は言うなれば「成人向け神話」である。古バビロニア時代及び中期バビロニア時代から新アッシリア帝国時代(紀元前2千年紀-紀元前609年)にシュメール語で書かれた写本から復元された。全文は154行ほどと短めで、内容はほぼ分かり切っている。 エンリルが若者であった頃、とあるニップル市内。処女(おとめ)ニンリル女神は母親ヌンバルシェグヌから「エンリルの目に止まっては困るので、ヌンビルドゥの河へ行ってはいけない。外で水浴びをしてもいけない」という忠告をくどいほど受けた。しかしニンリルは言いつけを破り、聖なる河で水遊びをし、ヌンビルドゥ運河の土手を歩いてしまったために、エンリルに目を付けられる。エンリルはニンリルを口説くと、ニンリルは頑是ない態度であられもないことを口走った。エンリルは彼の従神ヌスクが用意した船の上で、思いを遂げんとばかりにニンリルを強姦。このたった1回の行為で、ニンリルはシンを受胎してしまう。 エンリルは神々の指導者であるにもかかわらず、強姦の罪に問われ「50柱の神々」と「運命を決する7柱の神々」によって逮捕・天界を追放され、冥界へ落とされた。あろうことか、このとき被害者であるはずのニンリルは、エンリルを追って自ら冥界へ旅立ったという。 一方エンリルは、冥界の門番に「もしニンリルが訪ねて来ても、私の居場所を教えてはならぬ」と釘を指していた。更にエンリルは正体を隠すため門番に姿を変え、後を追ってきたニンリルから「エンリルは何処かしら」と伺いを受けても門番のふりをして問いに応じずにいた。ニンリルが「私の子宮には、輝く種(子宝=シン)がいるのです」と訴えると、門番(のふりをしたエンリル)は「その子は月神。天まで上がっていくでしょう。天へ行くエンリルの子の代わりに、私の子をキ(シュメール語で言う地)へ行かせましょう」と巧みにニンリルを誘い、門番(のふりをしたエンリル)は再びニンリルと交わり、シンの代わりに「キ」へ赴くネルガル(メスラムタエア)を受胎させた。 この後、同じことが2度繰り返される。1回は冥界を流れる「『人食い河』の人」に化けてニンアズを、もう1回は「人食い河」を導く「渡し船の人」に化けてエンビルルを、エンリルはそれぞれの場所で任意のものに姿を変えてニンリルを惑わし、2人の神を孕ませた。 奇妙なことに、物語の流れはこれを以って終了し最後はエンリルを延々と讃える叙述で結ばれる。
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