エドガー・ライス・バローズと「剣と惑星」もの
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/02 21:49 UTC 版)
「惑星冒険もの」の記事における「エドガー・ライス・バローズと「剣と惑星」もの」の解説
このような物語で市場で最初に成功した作家としてエドガー・ライス・バローズがいる。彼の火星シリーズの最初の作品「火星の月の下で」(Under the Moons of Marsのちに『火星のプリンセス』として出版)はパルプ雑誌「オールストーリー」に1912年に掲載された。バローズが惑星冒険ものの様式全てを考案したわけではないが、パルプ雑誌における異星を舞台とした冒険ものの様式を広く認知させたことは確かである。バローズの描く「バルスーム」(火星)は文化的にも科学技術的にも無秩序なごちゃ混ぜであり、「ラジウム銃」や不思議な光線を使って浮遊する乗り物など未来的な機器があるかと思えば、火星人の騎兵隊がおり、皇帝やプリンセスなどを頂点とした制度があり、剣で戦う場面も多い(それを正当化する設定がある)。このように未来的なものと古風なものを混合する手法は、フランク・ハーバートの《デューン》シリーズやジョージ・ルーカスの「スター・ウォーズ」に受け継がれた。火星シリーズのストーリーは全くの冒険ものであり、捕らわれて囚人となり、剣闘士として強制的に戦わされ、大胆な脱走をし、モンスターを狩り、悪人と決闘する。ファンタジー要素は幽体離脱、テレパシー以外ほとんどなく、「魔法」とされるものの多くは無視されたりいんちきとして暴露されたりする。 火星シリーズから多数の類似作品が生まれた。O・A・クラインのようにバローズが生み出した市場をうまく活用したものもいた。バローズ自身も1934年に金星シリーズを出版している。数十年後にジャンルが衰退したが、1960年代にはバローズ人気が再燃し、リン・カーターやマイケル・ムアコックがバローズへのパスティーシュともいえる作品を生み出した。ロバート・E・ハワードら「剣と魔法」(Sword and Sorcery)いわゆるヒロイック・ファンタジーの作家にも影響され、この模倣的ジャンルは「剣と惑星」ものと呼ばれるようになっていった。このジャンルは様式の幅が狭く、似たようなストーリーを単に生み出し続けるだけの進歩のない「レトロ」なジャンルである。おそらくそのためか「剣と惑星」ものの作家は極めて長いシリーズものを書くことが多く、その極端な例がケネス・バルマー(英語版)のドレイ・プレスコット(英語版)サーガで53巻まである。
※この「エドガー・ライス・バローズと「剣と惑星」もの」の解説は、「惑星冒険もの」の解説の一部です。
「エドガー・ライス・バローズと「剣と惑星」もの」を含む「惑星冒険もの」の記事については、「惑星冒険もの」の概要を参照ください。
- エドガー・ライス・バローズと「剣と惑星」もののページへのリンク