ウグイスのフンとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > ウグイスのフンの意味・解説 

ウグイスの糞

(ウグイスのフン から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/15 02:21 UTC 版)

ウグイスの糞(うぐいすのふん)は、ウグイスを乾燥させて粉にしたもので、小皺が取れたり肌のキメが細かくなる・肌のくすみが取れて色白になるとして[1]日本で古来より美顔洗顔料にきび治療薬として、また、着物の染み抜きに利用されてきた。「うぐいすの」と表記すると、物質の実情を知らない者が「糞」のイメージから衛生的不快感を持つなどの誤解が生じやすいため「うぐいすの」などの名称で販売されている。「ゲイシャ・フェイシャル」(芸者の美顔)の名称で欧米でも提供されるようになっている[2]

歴史

ウグイスの糞の利用は、平安時代朝鮮から日本にもたらされたものである[2][3]。朝鮮では、生地の染料を落とすのにウグイスの糞を使い、衣服に複雑なデザインを施すことができた[2][3]。日本では、織物の汚れを落とすためにウグイスの糞を使用していた[4][5]江戸時代には、美容にも利用されるようになった[3]。ただし、3世紀には日本の女性が糠袋やウグイスの糞を美白に使用していたとする資料もある[6][7]。芸者や歌舞伎役者は、亜鉛を含んだ白粉を使用していたが、これが皮膚病の原因になったと考えられている[2][8]。この化粧を徹底的に落とし、美白や肌色のバランスを整えるためにウグイスの糞が使用されていた[2][4]。また、僧侶はウグイスの糞を使って頭皮を磨いていた[2][3]

現代になって初めてウグイスの糞の使用について書かれたのは、1933年に出版された谷崎潤一郎による明治時代を舞台にした小説『春琴抄』である。

現在、東京都内で政府の承認を受けたウグイスの糞を販売しているのは、創業200年の老舗化粧品店である浅草の百助化粧品店のみである[9][10]

利用

ウグイスの糞は、水で溶いてペースト状にして使用する[2]。角質除去のために米ぬかを加えることもある[2]。ペーストを顔面に塗って数分間揉み込んだ後、洗い流す[2]。米ぬかにより、わずかな麝香の香りを中和することができる[11]

ニューヨークのあるスパでは、1時間180ドルでゲイシャ・フェイシャルを提供している[8]

製法

ウグイス

ウグイスの糞は、飼育されたウグイスの糞を集めて製造される。野生のウグイスは昆虫や木の実を食べるが、飼育するウグイスには植物の種が与えられる[2][12]。ケージの中の糞を集め、紫外線を当てて殺菌する[2][12]。糞は通常、脱水機で乾燥させる[2]。紫外線による殺菌を兼ねて、2週間以上天日乾燥させるものもある[13]。これを細かく砕いて白色の粉末にする。糞を陶器製の球に入れて18時間回転させて粉末にする[2][13]

なお、ウグイスは大量飼育が難しく、得られる糞も少量であることから、市販の「ウグイスの糞」と称する商品は、ほとんどが別科ガビチョウ科ソウシチョウを飼育し得られた糞を原料に使用している。

機序

ウグイスの糞の洗顔の機序は、完全には解明されていない[4]

ウグイスの糞は尿素グアニンを高濃度に含んでいる[2]は「総排出腔」という同一の開口部から糞・尿ともに排泄するため、鳥の糞には尿の成分である高濃度の尿素も含まれている[2][4]。尿素は、肌の保水成分として化粧品にも使われている[2][4]。グアニンは、魚類の銀白色部位を構成する主要成分であり、肌に遊色効果を与えると考えられている[2][8]。ウグイスはが短いため、糞にはタンパク質、脂肪分解酵素のほか、皮脂や頭垢(フケ)に作用して肌を白くし、シミを消す美白酵素が含まれていると言われている[13]

多くの情報源で「グアニンというアミノ酸」が化粧品としての効果を与えているとしているが、グアニンはアミノ酸ではなくヌクレオチドである[2][3][11]

また、リゾチームなどの加水分解酵素が豊富に含まれるため、脱色作用もある。

大衆文化において

長年ニキビに悩まされてきたヴィクトリア・ベッカムは、肌の改善のためにウグイスの糞を使用していた。ビクトリア・ベッカムが日本人女性の肌の透明感に憧れ、そこからウグイスの糞を知ったとされている[12]

アーサー・ゴールデンの1997年の小説『さゆり』では、主人公の千代は先輩芸妓からのいじめに対する仕返しとして、ウグイスの糞にハトの糞を混ぜている[14]

童話『白雪姫』を題材にした2012年の映画『白雪姫と鏡の女王』では、ジュリア・ロバーツ演じる邪悪な女王が、王子を口説くために過激な美容治療を受けるが、その治療の最初に、女王の顔に鳥の糞を塗っている。

脚注

  1. ^ Amy Eisinger (2008年7月23日). “New York's weirdest spa treatments”. NYDailyNews.com. http://www.nydailynews.com/lifestyle/health/2008/07/24/2008-07-24_new_yorks_weirdest_spa_treatments.html 2010年7月14日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r Shanna Freeman. “How Geisha Facials Work”. HowStuffWorks. 2010年7月13日閲覧。
  3. ^ a b c d e Moore, Janet H. (2001年12月16日). “The Nightingale Facial”. Asian Wall Street Journal 
  4. ^ a b c d e Liane Yvkoff (2008年9月26日). “Try a placenta or bird poop facial”. Cable News Network. http://www.cnn.com/2008/LIVING/homestyle/09/26/bird.poop.facials/index.html 2010年7月13日閲覧。 
  5. ^ Carroll 2007, p. 249
  6. ^ Berg 2001, p. 174
  7. ^ Drill et al. 2002, p. 86
  8. ^ a b c Shizuka New York Day Spa. “The Geisha Facial: From an ancient Japanese tradition...Bird Poop Facials!”. 2010年7月13日閲覧。
  9. ^ Fodor 2009, p. 180
  10. ^ Frommer 2010, p. 241
  11. ^ a b Timothy Gardner (2008年4月25日). “Facial with bird excrement takes flight at New York spa”. Thomson Reuters. http://in.reuters.com/article/idINN2542211820080425 2010年7月14日閲覧。 
  12. ^ a b c Melissa Whitworth (2008年10月16日). “Geisha facial, the 'latest beauty secret' of Victoria Beckham, brought to the masses”. London: Telegraph Media Group Limited. オリジナルの2009年6月13日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090613005404/https://www.telegraph.co.uk/fashion/beauty/3365670/Geisha-facial-the-latest-beauty-secret-of-Victoria-Beckham-brought-to-the-masses.html 2021年2月13日閲覧。 
  13. ^ a b c Body4Real.co.uk. “Japanese Nightingales Droppings (Uguisu No Fun)”. 2011年9月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年7月14日閲覧。
  14. ^ Golden 1997, p. 80

参考文献


ウグイスのフン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 00:37 UTC 版)

ウグイス」の記事における「ウグイスのフン」の解説

詳細は「ウグイスの糞」を参照 その糞には豊富にリゾチームなどの加水分解酵素含まれ顔面塗布する事で角質層柔らかくなって、小皺取れたり肌のキメ細かくなる・肌のくすみが取れて色白になる事から、古くから美顔洗顔料にきび治療薬として人気がある。「うぐいすの粉」として市販されているものがそれで、この酵素には脱色作用もあるため、着物染み抜きにも利用される以前は毛はえとして用いられていたこともあった)。 なおウグイス大量飼育が難しく得られる糞も少量であることから、市販の「ウグイスの糞」と称する商品は、ほとんどが別科ガビチョウ科ソウシチョウ飼育し得られた糞を原料使用している。

※この「ウグイスのフン」の解説は、「ウグイス」の解説の一部です。
「ウグイスのフン」を含む「ウグイス」の記事については、「ウグイス」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ウグイスのフン」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ウグイスのフン」の関連用語

ウグイスのフンのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ウグイスのフンのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのウグイスの糞 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのウグイス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS