アナログ計算機械
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 06:59 UTC 版)
「レオナルド・トーレス・ケベード」の記事における「アナログ計算機械」の解説
アナログ計算機械は、方程式を物理現象に置き換えることで解を求めるものである。数値は歯車の角度のような何らかの物理量で表される。トーレスはこのような機械を「代数マシン」(Algebraic Machine、西: Máquina algébrica)と呼んだ。方程式を解く機械は18世紀まで遡ることができ、19世紀頃には様々なものが考案された。トーレスの成果もそれらの上に成り立つものである。1893年、トーレスはマドリードの王立科学アカデミーで代数マシンについての論文を発表した。1895年、パリの科学アカデミーと科学推進協会のボルドー会議で機械のプロトタイプが披露され、1900年には再びパリの科学アカデミーでさらに一般化し理論化した論文の発表を行った。 トーレスは機械式のアナログ計算機械を複数製作した。もっとも有名なものは代数方程式を解く機械で、8つの項からなる任意次数の代数方程式を高い精度で解くことができた。この機械は以下の式を計算で求めることができる。 α = A 1 X a + A 2 X b + A 3 X c + A 4 X d + A 5 X e A 6 X f + A 7 X g + A 8 X h {\displaystyle \alpha ={\frac {A_{1}X^{a}+A_{2}X^{b}+A_{3}X^{c}+A_{4}X^{d}+A_{5}X^{e}}{A_{6}X^{f}+A_{7}X^{g}+A_{8}X^{h}}}\,} ここで X は変数を、A1 … A8 は各項の係数を表す。α = 1 の場合を考えれば以下の式となり、代数方程式の根を求めることができる。 A 1 X a + A 2 X b + A 3 X c + A 4 X d + A 5 X e − A 6 X f − A 7 X g − A 8 X h = 0 {\displaystyle A_{1}X^{a}+A_{2}X^{b}+A_{3}X^{c}+A_{4}X^{d}+A_{5}X^{e}-A_{6}X^{f}-A_{7}X^{g}-A_{8}X^{h}=0\,} トーレスの機械では各項を対数スケールで計算した。そうすることで各項を A1 + a × log(X) のように和と積のみで計算でき、非常に広い範囲の値を扱え、さらに計算時の相対誤差を値の大小に関係なく一定にできる長所がある。しかし各項の和を計算するためには、対数スケールでの計算値 log(u) と log(v) とから精度よく log(u + v) を求める必要がある。この計算のため、トーレスはエンドレス・スピンドル(endless spindle、西: husillo sin fin)と呼ばれる独自のメカニズムを考案した。このメカニズムはワインボトルのような形状の螺旋状歯車を用いた複雑な差動歯車で、y = log(10V + 1) を計算できる。log(u) - log(v) = log(u/v) = V と置くと u/v = 10V であることを用い、以下の式を利用して log(u + v) を計算する。 log ( u + v ) = log ( v ( u / v + 1 ) ) = log ( v ) + log ( u / v + 1 ) = log ( v ) + log ( 10 V + 1 ) {\displaystyle \log(u+v)=\log(v(u/v+1))=\log(v)+\log(u/v+1)=\log(v)+\log(10^{V}+1)\,} トーレスはこの機械以外にも、1900年頃から歯車とリンク機構を用いて 2 次方程式 X2 - pX + q = 0 の複素数解を求める小型の計算機械を考案し、また一階微分方程式を解く積分器なども製作した。現在それらのいくつかはマドリード工科大学にあるトーレス・ケベード博物館(Museo "Torres Quevedo")に収められている。
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